新たなチャレンジを後押しする環境が大事

押久保:コミュニケーション力といえば、BtoBでは特に、マーケティングと営業との障壁が課題になります。ツールの費用対効果のところで、伊佐さんは全体売上との比較と言われていて、マーケティングが“経営ごと”にリンクしている印象ですが、マーケティングと営業の会話の基本になるのはやはりデータですか?
伊佐:そうですね。元々「ゴールはひとつ」という意識がありますし、毎週のミーティングでマーケが興味関心を高めたユーザーに対して、営業がフィードバックしているので、ちゃんとつなげてくれているという信頼関係も生まれます。あのときの見込みユーザーはどう再現できるのか、など話も深まるので、数値をベースにしたミーティングは強い組織をつくるひとつの秘訣かもしれません。
押久保:データとコミュニケーション、人の部分もやはり大事なんですね。最後に、育成の観点も含めたマーケターの未来について、牛田さん、いかがでしょう?
牛田:僕は今後のマーケターは「自己否定」に向き合わざるを得ない、と思っているんです。なぜなら、非構造情報まで含めてデータ化し、意思決定するプロセスを構築していくと、そこに人の手が介在するほど失敗する確率も高まるかもしれないからです。システムの精度が高まるほど、従来のマーケターの仕事はなくなるかも。そんな首を絞めるようなことを積極的に行いながら、自分の役割を新たにつくれるか、迫られていると思いますね。
伊佐:深いですね。役割を新たにつくるチャレンジのために、失敗を許すチームやメンバーも大事ですね。ただ、そうした環境づくりのような中長期的な投資と直近の売上のバランスは、経営視点では重要なので、その判断はかなり意識しています。

数値化したデータはごく一部、非構造化情報にも注目
押久保:自社の成長段階に応じて、その判断もやはりデータが基本になりますか?
伊佐:そうですね。ただ、データだけ見ていると行き詰まったりする。営業と顧客の会話をひたすら聞くと、気付きがあることもあります。
柿野:数値が集まるのでそればかり見ようとする、デジタルマーケティングのある種のワナですね。でも実際は数値化されない情報の方が多く、そちらがむしろ重要なこともあるので、デジタルを横目で見つつ、顧客の期待を超えるような活動をどう生み出せるかを柔軟に考えていく必要があると思います。
牛田:今後、お二人の指摘する非構造化情報も、IoTなどの発展でどんどんデータ化が可能になります。人の感覚まで、経営やマーケティングの客観的な意思決定材料になっていくでしょうね。
押久保:お三方の話から、マーケティングとテクノロジー、そして経営がますます密接になっていることを強く感じました。最後に、今後への挑戦をひとことお願いします!
伊佐:freeeでスモールビジネスの方々を創造的にしていくことはもちろん、さらにBtoBマーケティングの好事例としても、freeeが際立つ世界観を目指したいと思います。
柿野:コンカーは、領収書の電子保管に関する規制緩和を政府与党に働きかけていて、2017年から領収書ののり付け提出が不要になります。デジタルマーケティングで事業を発展させながら、よりよい日本にしていく、社員一丸となってそんな会社にしていきたいですね。
牛田:ずばり、日本のGDPを底上げしたいです。Airレジを通して店舗や企業がIT化すれば、事業の生産性の向上に寄与できるので、その積み重ねで日本の活性化を図れればと思います。
