データビジネスの時流に乗り急成長
DATUM STUDIO(デイタム スタジオ)は、データをビジネスに活かしたいというクライアントに対して、データ分析基盤の構築から分析に関するコンサルティングまで、様々な支援を行う企業だ。2014年8月の創業から3期目を迎える今、社員数は約50名と急成長を遂げている。
里氏は、ヤフーでウェブエンジニアとしてキャリアをスタートさせ、DeNAに転職してデータマイニングに従事。さらにドリコムに移りソーシャルゲームの分析などを担当した後、DATUM STUDIOの立ち上げに参画した。ウェブサービスのデータベース構築やアルゴリズムの構築はもちろん、テレビCMの効果分析などシステム側だけでなくマーケティングの視点での業務経験も豊富だ。
安部氏は医療系の研究所出身でゲノムサイエンス分野の研究をしており、その後IT系のコンサル会社を経て、現職に就いている。
もともと同社は、データ分析やレポーティング、提案などのコンサルティングを行っていた。しかし最近ではクライアントの要望の幅が広がり、予測モデル作成、ミドルユーザーをヘビーユーザーに育成するためのパターンマイニングなども行っている。
買い取り価格適正化から映画のレビューまで多様な事例
ではDATUM STUDIOがクライアントに対しどういったソリューションを提供しているのか。3つの事例を紹介したい。
1.買い取り価格適正化サービス
オークションなど不要なものを欲しい人に売る取引において、販売側・購入側・中間業者の皆が知りたいのが適正価格だ。同社ではこの適正価格を導き出すサービスを実現しようとしている。例えば中古車であれば、車種や走行距離、経過年数などの様々なデータから、分析をかけるための構造化データに変換する。その後、マイクロソフトが提供する機械学習サービス「Azure Machine Learning」(以下、Azure ML)を使った分析を行う。これにより、適正価格を導くというのだが、その精度を上げるには「クライアントとのコミュニケーションが重要だ」と安部氏は語る。
「データベースに入っている“車の色”の情報を蓄積するだけでは精度は上がりません。例えば“薄い色はキズが目立つから、中古車ではあまり値段が上がらない”などというお客様が感覚的に知っている情報がキーになります。そのため、お客様としっかりお話をして、情報を得たら細かく取り入れていくことが大切ですね」(安部氏)
2.大手マーケティング会社のデータ分析基盤
様々なデータソースや企業から取得したデータを統合し、分析レポートを出すといったビジネスを行うクライアントがいる。これまで同クライアントでは、多種多様なデータを統合する部分を人力で行っていたが、データの統合とレポート作成を機械学習で行えないのかという依頼がDATUM STUDIOに来た。その依頼に対し、同社はAzure MLを活用したデータ分析基盤を提案した。
「このケースの場合、機械学習をクライアント自身が使い分析結果を導き出したいというニーズでした。Azure MLはとても扱いやすいので、データ分析基盤の構築から活用プロセスを当社が設計し、その中でクライアントの行いたい分析をしていただきました」(里氏)
3.映画評判分析Webアプリ
最後は映画配給会社からの依頼だ。依頼の内容は、Web上に散らばっている映画や俳優の評判に関するレビューをデータとして蓄積し、ある条件で映画を作った場合売れるのかを予測したり、類似作品が過去どれくらい売れたかなどの情報を出したりできる。Azure MLは予測や情報のレコメンドに一役買っている。分析に必要なレビューは映画のレビューサイトなどをクロールし取得しており、自社データだけではできないことも公開されているデータを活用することで可能にした。
記事で紹介できなかった顧客事例を資料にて配布中!
今回取材したDATUM STUDIOのクライアント事例が多く掲載された資料が現在公開されています。DMの最適化や顧客セグメントの作成など、記事で語られていないデータ活用・機械学習に関する事例が多く紹介されているので、ぜひ記事と合わせて読むことをおすすめします! 詳細はこちら
Azure MLの活用が進む3つの理由
このように、様々な事例でAzure MLを活用している同社だが、魅力を感じている理由として以下の3点をあげる。
1.安価である
2.わかりやすく、初心者でも使いやすいUI
3.ウェブAPI化で誰でも均一のクオリティに
1点目は言うまでもないが、安くていいものは誰もが取り入れたい。DATUM STUDIOによれば、クラウドサービスであることもあり、他の有料製品に比べるとAzure MLは手軽に取り入れやすい価格だという。
2点目に関してだが、Azure MLは、フローチャートに分析モデルやデータをドラッグ&ドロップするだけで分析を行うことができる。つまり、コードが書けないクライアントでも扱えるUIになっているのだ。これによって、自社のビジネス上の課題に対する回答を簡単に導き出せる。
3点目のWebAPIにできることは、DATUM STUDIOのようなサービス提供側にとってのメリットが大きいという。これまでのデータ分析は属人的なところがあり、同じ会社に依頼しても、担当者によってサービスのクオリティに差がでてしまうところがあった。同社でも、多少そういった点があったという。
しかし、様々な種類のデータ処理のフローを作成してWebAPIとして用意する。これにより、不慣れな業務を担当する時も関連したWebAPIを活用するだけで、一定のクオリティを出すことができる。急成長中で社員を増やしている同社としては、とても重宝しているという。
マーケターが、機械学習を使いこなすコツとは?
ところで、マーケターが機械学習を上手く使うためにはどうすればよいのか、両氏に伺ったところ、もっとも重要なのは目的を明確にすることだという。機械学習を魔法のように考えているマーケターも多く、「とりあえず、いい感じにしてください」といった漠然とした要望が来ることもあるというが、それでは支援会社もさすがにどうすることもできない。
「データを活用するということは、最適化したいものを明確にする必要があります。つまり、手法ありきでは上手くいきません。当社は、そこを考えるところからも支援しておりますが、自社で活用されるのであれば、ビジネスの何を改善するのかまず決定することが重要ですね」(里氏)
また、当たり前だが、機械学習にはデータが必要だということも忘れてはならない。データの蓄積できる基盤を用意する、データを提供している企業から調達を行うといったことが必要になる。
「たまに、データが無いのにデータ分析したいという難しいお話をいただくこともあります(笑)。データが無い場合、機械学習はそもそも無力です。その場合、当社ではデータを上手に取得するための基盤づくりをお手伝いしています」(里氏)
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マーケとITの部署が仲良くなるには?
さらに、両者はデータ活用に不可欠なこととして、IT部門内にいるシステム担当者との連携を挙げる。IT部門の大半は、マーケターがどういったデータを欲しがっているか理解していない。そのため、マーケティング部門とIT部門が協力し現状の課題、その解決に必要なデータを認識することが必要になる。
「マーケティング部門とIT部門が何かに取り組むというのは、外国人と会話をするようなものです。両者の使う言葉が全く違いますからね。そのため、当社のように両者の言葉を通訳する役割の設置、もしくは互いを理解する努力が必要です」(安部氏)
「お互いが背負っているミッションや、スピード感の違いも大きいように思います。例えば、マーケティング部門があるCMを投下し続けるべきかどうかの意思決定にデータ分析をしたいと言い始める。それに対しIT部門は精度の高いものを出そうと3ヶ月かけてしまったとなったら、その分析結果はお蔵入りになりますよね。マーケティング部門はいつまでに、どのくらいの精度の分析結果を求めているのかを伝えることが重要です」(里氏)
出張料理人からレストランへ。自社データで支援の幅を広げる
最後に、DATUM STUDIOが今後どのような事業展開を予定しているのか尋ねると、「出張料理人からレストランになりたい」と里氏は語った。いったいどういうことだろうか。
同社はこれまで、クライアントが所有するデータの中で、最適な選択肢を支援してきた。つまり、先方が持っている食材の中で最適なレシピの料理を作る出張料理人のような存在だった。
しかし近い将来は、同社自身がデータを保有し、より幅広い支援を可能にしていきたいという。これが、自社で調達した食材とクライアントが持っている食材をもとに最高の料理を提供するレストランの形だ。
「クローラーでデータの収集を進め、クライアントのデータと組み合わせたサービスを提供したいです。その中で、機械学習なども絡めていければと考えています」(里氏)
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