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ライターを消耗させるな! 『ジモコロ』運営陣が考える強いオウンドメディアの作り方

「ジモコロがうらやましい」といわれたい

MZ:ジモコロはどこに向かおうとしているのでしょうか?

岡安:短期的には、オウンドメディアが多い中で、「ジモコロってやっぱりいいよね」と着地をできるような年にしたい。それが結果的に5年後10年後まで続いて、記事一本一本も「あの記事面白いよね」と何度も読んでもらえて、リピートしてもらえる媒体になれたらいいと思います。

 ブレずに残り続ける、持続できるメディアであり続けたい。瞬間的な刈り取りになるとアドテクの代わりでしかないので。そうではなく、NHKのように一次情報を発信できるメディアであり続けたいですね。

柿次郎:ジモコロというブランドを大きくしたいというのが一番ですね。ジモコロはこの1年で一般的なオウンドメディアのイメージから脱することができたんじゃないかと思っています。次はウェブにとらわれずに展開したい。

 今、世の中のウェブメディアが消費型に向かってどんどん走っているじゃないですか。受け手の消費速度も年々早まっていますし。そういったメディアに関わっている人たちに「ジモコロがうらやましい」といわれ続けるのは、良いポジションじゃないのかなと。それが僕含め、関わっている人たちのエネルギーになるような循環を作りたいですね。

ライターを消耗して成り立つメディアを作って幸せですか?

MZ:「長く見られる」とのことですが、オウンドメディアは企業から見ると一つの施策で、どうしても一時的なもので終わるのではないかという見方もあるかと思います。

岡安:DSPの次にダイナミックリマーケティングが出てきて、これだとシュリンクするから、新規流入を取るためにオウンドメディアだ! という構図を見た経験が、マーケターならあると思います。オウンドメディアは広告の刈り取りのためではなくコンテンツを作る話なのに、企画が抜けてしまう。これはよくないと思いますね。

柿次郎:だから、1年前に「オウンドメディアをコスパもいい、広告感覚でやってもうまくいかないですよ」僕は怒ったんですよ。

 で、めちゃめちゃ急な例え話をしていいですか? アマゾンの奥地にはガリンペイロという黄金を求める荒くれ者がいます。で、実は地球上にある金の量は決まっていて、採取すればするほど残りは減るし、明日にでもなくなるかもしれない。でも、彼らはそんなことは考えずに一攫千金を夢見ています。問題なのは、貴重な金も一日採掘すると仕事終わりのビール1杯を飲める程度には日銭が稼げてしまうこと。だからずっと続けちゃうんですよ。この話をガリンペイロに密着したNHKの担当ディレクターに聞いて、「なんて残酷な世界なんだ」と感じました。少し食えちゃう世界って厄介なんですよ。

 オウンドメディアも同様で、クラウドソーシングなんかで安い単価の記事を大量に用意すれば何とか形になっちゃうんです。見よう見まねで、何度もこすられたネタばかりでも。ライター志望の人も「この調子で記事を書いていけばいつか報われる!」と思っているかもしれません。しかし現実は、編集者不在のメディアで技術やノウハウをしっかり教えてもらうことは不可能です。短時間に安価で、かつ大量に記事を書くことになるだけ。

 隙間時間で日銭を稼ぐ仕事としてはアリなのかもしれませんが、消費型のメディアだとせっかく書いた記事も消えてしまうかもしれません……。残るのは少しのお金だけ。本来であれば、それなりのお金とスキルを残すべきなんです。

MZ:つまりガリンペイロと一緒だと。例え話が突飛すぎてビックリしましたが、マーケターもそこは自覚的になる必要がありますね。

岡安:もちろん、各記事や情報によってメディアのかたちは変わると思います。例えば、エンタメ業界に近いオウンドメディアだと、クラウドソーシングを使って月に何百本のレベルで記事を高速に公開しています。誰もが知っているタレントやイベント情報だからそれは成立する。ただ単純にSEO対策をしたいのか、流入がほしいのか、ブランディングなのか、目的によって手法が変わる気がします。そこが見えないまま流行に乗ると悲しい結果になる。

柿次郎:でも、ライターにきちんと対価を払い、取材対象には敬意を払っていい記事を作るという循環は絶対に必要ですよ。誰かが割りを食っている状況のままではウェブメディア全体の底上げがされませんから。

 あと、出典元を小さい文字で添えた画像引用の記事制作は法律でアウトにしてほしいです。写真一枚撮るために時間とお金をかけてる人たちに失礼すぎるので。「クラウドソーシングで安い記事を依頼→画像は全部引用→取材も行かずにネットで調べた情報をつなぎ合わせる→SEOまわして検索表示1位!」みたいな流れ……僕は本気でイヤだなぁと思っています。

岡安:確かに、作り方は重要ですよね。引用だらけの大量の記事を作って、何百万PVのオウンドメディアですといっても、メディアの代表記事は何? と聞かれたら答えられないケースもあると思います。そうなると、果たしてオウンドメディアの意味はあるのか、と。

MZ:非常に考えさせられる話です。企業はメディアを運営する意義と責任を考えたうえで、舵を取る必要があると痛感しました。本日はありがとうございました。

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この記事の著者

伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/08/05 08:00 https://markezine.jp/article/detail/24848

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