世界と日本の差を肌で感じ、具体的なメソッドも勉強
エクスペリアンのマーケティングサービスでは、メールなどデジタルマーケティングの支援サービスに加え、マーケティングオートメーション(以下、MA)のプラットフォーム提供開始をきっかけに本格的にMA中心の事業展開も行う。そんな同社が、クライアントやパートナー向けに10年前から毎年開催しているのが「Experian CLIENT SUMMIT」(以下、クライアントサミット) だ。
クライアントサミットでは、データ統合の重要性や顧客理解など、その年々のマーケティングトレンドを意識したテーマを取り上げている。そして、記念すべき10回目を迎えた今回は“レベルアップ”をテーマに、一段上のコミュニケーション実現のためのロードマップやシナリオ、さらなる成功を得るための新しい市場トレンドなどが提示された。
この注目のイベントに参加してきた日本人社長がいる。ファッション・コ・ラボの代表取締役社長、そして多数のアパレルブランドを持つワールドの執行役員も務める中嶋築人氏だ。
ファッション・コ・ラボは、自社でファッション通販サイト「FASHIONWALKER」「OUTLET-WALKER.com」を運営。さらにECサイト運営で蓄積したノウハウを活かし、ファッションブランド向けに公式ECの立ち上げから集客・販促までを支援するソリューション「コマ助くんNEO」を提供しており、同ソリューションはSTRASBURGOを販売するリデア株式会社など26社、54ブランドに活用されている。EC事業者、支援企業という2つの顔を持った企業だ。
同氏に今回のイベントに参加した最大の目的を聞いたところ、「自己のレベルチェック」だという。グローバル単位で見たときに、自分達がどれくらいのレベルのデジタルマーケティングを行えているのかは、普段実務を行っているとなかなか見えづらい。加えて、デジタルマーケティングで最先端を走るアメリカの最新トレンドと、具体的な活用事例も知ることができるため、今回のイベントは良い機会だったという。
「日本のイベントのほとんどが概念論に終始してしまうことが多く、じゃあ実際どうやるのか、っていうことが抜けているセッションが多い。一方、アメリカのイベント、特にクライアントサミットは極めて実践的で、かつ日本よりも先進的な事例を知ることができる。イベントに出てくる事例も実証とデータに基づいていて、講師もその企業のマーケティング担当者なので説得力もあります。参加する中で日本とアメリカのレベルの差を痛感しましたね」(中嶋氏)
各店舗でエリアマーケティングを最適化
クライアントサミットの中で興味深かったセッションを中嶋氏に尋ねたところ、全米でアウトドア用品の小売をチェーン展開するバス・プロ・ショップスの事例に関するセッションを挙げた。同セッションでは、マーケティング責任者がエクスペリアンのソリューションを使い、実際に店舗でどういったオペレーション、エリアマーケティングを行っているのか、そして組織上の意思決定はどの部署が行っているのかまで、極めて実践的に詳しく紹介された。
例えば、各店舗にマーケティング担当者がいて、店舗近隣エリアの顧客に向けてカスタマイズされたメールを配信している。この他にも様々な実践施策やそれに対する効果を聞いて中嶋氏は驚愕したという。
「話が具体的なので“あ、そういう活用法で、組織を組み立てるにはこうすればいいのか”と、実践のヒントが多く得られました。エクスペリアンのソリューションを入れた動機も、担当者が語っているので共感できるし、自分ごととして捉えやすいなと思いました」(中嶋氏)
さらに中嶋氏は、イベントの講演資料が極めて具体的な点もクライアントサミットの特長だと続ける。例えばクリエイティブに関するセッションの資料には、HTMLメールでボタンをどこに配置したら効果的なのかなどの細かな点まで、実践例を交えて様々な事例が紹介されている。
「もらった資料をそのまま自社の担当者に渡せば、明日からすぐできることが書いてある。ここまで詳細な資料を提供されているのは、さすがだなと思います」(中嶋氏)
それにしても、なぜここまで実践的なセッションが設けられているのだろうか。クライアントサミットを主催するエクスペリアンの日本法人であるエクスペリアンジャパンにて常務取締役を務める橋本勇人氏はその理由についてこう語る。
「私たちがクライアントサミットで大切にしていることは、参加者同士がつながる場を提供することです。同業他社はもちろん、他業種においてもベンチマークとなる企業を知る機会を提供したいと考えているからです。事例でケーススタディを学ぶセッションはもちろんですが、ソーシャルメディアやデータなど、テーマをいくつかに分けて実践論を語るセッションも用意しています。今後はもっと理解しやすくなるよう、業界別にトラックを分けることも検討しています」(橋本氏)