最後のピースがヤフーのAPI公開だった
運用広告のフル自動化パッケージを開発する中で、ネクストが最終ピースと考えたのが、Yahoo!プロモーション広告のAPI提供、という流れとなる。
「運用広告をPL(損益計算書)ベースで突き詰めていくほど、弊社にとってヤフー媒体の存在は相当なインパクトがあるわけです。ネクスト内でも最上位クラスの出稿量がある媒体のAPIが解放されれば、本当の意味での“フル”自動化に前進できる。
そこで約1年かけて、デジタルマーケティングならびに運用広告に関する弊社の取り組みや、媒体が弊社にもたらすインパクトを伝えながら、粘り強い交渉を経て、今回のリリースとなりました。我々は全体のROIを10%以上改善できると踏んでいますし、ヤフー媒体単体で見れば15%近くのROI改善を現実的に狙っています」(菅野氏)

すでにGoogleはAPIを提供していたが、ヤフーは基本的に代理店にしかAPIを解放してこなかった。ここにジレンマを抱える広告主は少なくないだろう。ネクストのような大規模な広告主に向けて、直接的なAPIを公開したことは、その他多くの広告主の動きに刺激を与える意味でも、このリリースの意味は存外な大きさを放っている。
全自動でコミュニケーションストーリーを作りたい
ネクストのデジタルマーケティングの展望について、最後にもう少し具体的な話を聞いた。短期的には、フル自動化で社員(マーケター)をルーティンから解放させたい、と菅野氏は語る。
「運用型広告のプロセスは3つ、入稿・入札・レポート(作成)です。これらのルーティンワークのうち、入札やレポートは自動化、システム化できていましたが、入稿はできていませんでした。私たちのスタンスは、ソリューションがないならソリューションを作ってしまえ、ですから(笑)。
フル自動化については先に触れたとおり、先行的にグループ内で2社が実現しましたが、この1年目安で、グループ全体に導入して標準化させたい。もっとクリエイティブに人的リソースをかけたいですね」(菅野氏)
またネクストは、「DB+CCS(データベース+コミュニケーション&コンシェルジュサービス)でGlobal Companyを目指す」という中期経営戦略も掲げている。そのことも念頭にしながら、短期的なフル自動化実現の延長線として、菅野氏が中長期的な展望を語ってくれた。
「コミュニケーションストーリーの自動化に挑みたいです。実際、Salesforce Marketing Cloudによって実現しつつあり、広告やCRMを連結させてソリューションを自動で作り出せないかと考えています。今は一企業の一製品が実現しつつある段階のものですが、近い将来、もっと大きな舞台で実現させたいです」(菅野氏)
インハウス化の動きや自動化の取り組みは、ネクストにとってまだまだ序章としての動きである。ネクストが放つコミュニケーションストーリーの自動化はいつ実現できるか。現実的にはまだ先の話だが、ネクストの実行力は、こうした未来を着実に引き寄せているのではないだろうか。