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「オムニチャネルはバズワードではない。スタンダードだ」キタムラ逸見、ラストセッションに込めた思い

店舗売上について、EC事業部のアシスト効果も評価する

 オムニチャネルが企業全体の最適化であることを確認しながら、逸見氏は、オムニチャネルの本質がOne to Oneのコンテンツマーケティングであることを説明する。ここで取り上げた例が、キタムラの店舗受取割合の高さだ。

 キタムラは、2015年のEC関与売上(宅配売上+店受取売上)が419億円。そのうちの6割はネットからの注文(家注文)。そしてその7割の顧客が、店舗での商品受取だったという。

 「なぜ、お客様はわざわざ店舗での受取を希望されるのか? 私たちが単に商品を届けることを求められていないからです。店舗というだけではなく、専門店の接客が求められている。たとえば、お客様には商品スペックの説明の前に、その購買目的をうかがって(デジタルカメラなら、趣味の鉄道のためですか? 風景撮影用ですか?)、タブレットを使いながら予算に合った商品を一緒に探し、お客様のニーズにかなった商品をお勧めする。私たちはこれらの対応を“人間力EC”と呼び、専門知識を有したスタッフがITを活用し、直営専門店だからこそできる接客を心がけています」

 こうした対応が、単なる理念や掛け声に終わらず実行できる裏側には、人事評価を含めた体制の仕組み作りも関係する。キタムラだと、EC事業部のKPIを「EC関与売上の最大化」に据えた体系を敷く。

 「店舗受取は、ECからすれば売上ではなく受注です。でもネット注文→店舗受取も店内のECタブレット経由の店頭注文も、売上が店舗側につきます。でも実際は、ECが店舗売上のアシストをしているわけで、ネット注文とECタブレットによる送客について、きちんとEC事業部側の評価もします。そうすれば、本部と一緒に店舗支援業務を行う部隊として、全社貢献の最大化にも繋がります」

オムニチャネル実現に不可欠な、One to Oneの実践

 逸見氏が考えるOne to Oneのコンテンツマーケティングとは、お客様が求める形で、求める企業の専門性(企業が発信したいコンテンツ)情報を、求めるタイミングで提供することだとする。その提供の積み重ねによって、顧客自身が納得して購買(利用)し、やがて継続的な顧客化へとつながっていく。

 「会社や事業の専門性について、自分たちの思い込みではなく、顧客やクライアントの立場で理解しておくことです。コンテンツマーケティングによる顧客満足は、感覚的な話ではなく実際に売上につながる話なんです。コンテンツマーケティングの実践による顧客とのコミュニケーション強化が顧客満足を高め、利益を生む。つまり、顧客満足の向上≒営業行為なのです」

 セッションでは、店内で写真のプリント仕上がり待ちの顧客にアプリを勧めるという例を挙げた。

 「プリント仕上がり待ちの時間を使って、写真ニーズの高いお客様にいつでもどこでもスマホから注文できるキタムラのプリントアプリのメリットを伝えます。店側のことをいえば、アプリ経由注文の受取方法の大半は宅配ではなく店舗なので、店舗の売上増につながる。アプリのダウンロードや利用促進によって店舗のリピーターになる。また、店内の注文端末が満席になりにくくなる分、本当に店内でのサポートが必要なお客様への接客に注力できる。

 店内のオペレーションにアプリの利便性説明(専門性)を組み込んでいき、リピーターにしていく。こうしたお客様とのコミュニケーションもまた、One to Oneのコンテンツマーケティングであり、オムニチャネルコミュニケーションだと呼べると思っています」

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海外事例に学ぶ、取り組みの素早さと実行力

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この記事の著者

遠藤 義浩(エンドウ ヨシヒロ)

 フリーランスの編集者/ライター。奈良県生まれ、東京都在住。雑誌『Web Designing』(マイナビ出版)の常駐編集者などを経てフリーに。Web、デジタルマーケティング分野の媒体での編集/執筆、オウンドメディアのコンテンツ制作などに携わる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/12/21 14:00 https://markezine.jp/article/detail/25661

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