サッポロビールのオウンドメディア「OVER QUALITY」
オウンドメディア「北海道Likers」や、ユーザーとともに新商品を共創する「百人ビール・ラボ」など、これまで多くのデジタル施策を展開してきたサッポロビールが、2015年12月に公開したWEBコンテンツ「SAPPORO OVER QUALITY(以下、OVER QUALITY)」をご存知ですか?
同サイトでは、達成感を肴に最高の一杯を飲むべく、莫大なエネルギーと時間を費やして絶景の地へと赴くさまを写真とテキストでつづったコンテンツが用意されています。 “ビール離れ”が叫ばれる若年層からも支持を得ているとのこと。そこで今回は、サッポロビールで同施策の指揮を執る工藤光孝氏と山根一洋氏のお二人に、「OVER QUALITY」の戦略や今後の展開について取材しました。
消費者との接点を増やし、顧客理解を深めるためのマーケティング
――御社はこれまでもデジタルを活用した様々なプロジェクトやキャンペーンを実施されていますが、「OVER QUALITY」は、どのような狙いで立ち上げたのですか?
工藤:これまでサッポロビールは、消費者コミュニケーションを目的に2011年に立ち上げた「北海道Likers」や「百人ビール・ラボ」、ECサイトの先駆けとして2012年に立ち上げた「わくわくブルワリー」と、施策を重ねてきました。しかし実は当時、消費者コミュニケーションであれば、経営戦略部、ECサイトの運営であれば新価値開発部といったように、それぞれ違う部署が管轄していました。これらを一元管理する組織として新たにデジタルマーケティング室を設け、デジタルに本腰を入れ始めたのが2013年4月のことです。
以降、本格的にデジタルマーケティングへの注力に舵を切り、一層多彩なコンテンツを打ち出してきました。これらのコンテンツ運営の目的は大きく二つ、サイトに来てくださるお客さまと深くつながることと、新たなお客さまに認知を広めることです。この文脈でいくと「OVER QUALITY」は、どちらかといえば前者、お客さまと深くつながることを狙いに立ち上げたプロジェクトです。
――「深くつながる」とは、どういったことでしょうか?
工藤:言い換えれば、お客さまとサッポロビールの接点を増やす、ことでしょうか。そのためには、まずは私たちのサイトに来ていただき、長く滞在していただくことが必要です。サイトの滞在時間を増やすこと、そしてWEBサイト会員数を増やすこと。
これらを実現できるコンテンツを生み出すために常に考えていることは、「お客さまは何を求めてサイトにやって来るのか?」ということです。そのヒントを得るために、ある調査をしたところ、旅行とお酒の親和性の高さが見えてきました。そこで、旅行を大きく打ち出したコンテンツが、お客さまと深くつながる新たな入口になるはずだ、と考えました。
――だから、「OVER QUALITY」は旅行を切り口にしたコンテンツを提供しているのですね。
山根:はい。マーケティングから見えてきたお客さまの興味関心を引くコンテンツ、つまり「旅行」というニーズに寄り添いながら、「こんなところだったら『黒ラベル』が飲みたい!」というように、“自分ゴト化”できるシーンを提供したいと考えました。
また、WEBコンテンツを運営する狙いには、新たなお客さまに認知を広めるという側面もあるため、今回の施策では20~30代の若年層をメインターゲットとしています。そこで「旅行」というキーワードをさらに深掘りし、若年層に響くトレンドから「グランピング」というテーマを打ち出しました。
グランピングとは、「グラマラス」と「キャンピング」を掛け合わせた造語です。アウトドアの醍醐味を前提としながらも、ラグジュアリーなテイストを感じられる時間の過ごし方ですね。
この連載は?
本連載はマーケティングにおけるデジタル活用情報を伝えるウェブメディア、「D2Cスマイル」の記事を、MarkeZine向けに再編集した出張版です。出典元はこちらです。