PC領域のデータを活用してモバイル領域を強化する
――まずお二人のプロフィールからお話しいただけますか。
小林:私はSupership広告事業本部ビジネス開発部に所属しています。主に行っているのは、クライアント様のデータ利活用の推進、データを活用した新規事業の立ち上げの二つです。
渡邉:私は楽天のアドソリューションズ事業におけるプロダクト開発を担当しています。以前はアドテクノロジー関連の企業に勤めていたのですが、クロスデバイスのソリューションを世に送り出したいと思うようになり、楽天ではそれができると考え、2016年12月に転職してまいりました。
――今回、楽天とSupershipがタッグを組むことで、双方が保有する国内最大規模のオーディエンスデータを活用したターゲティング・分析が可能になりましたね。まずは両社の提供しているサービスについて教えてください。
小林:Supershipがこの取り組みで提供させてもらっているプロダクトは、「ScaleOut Ad Platform」と呼ばれているものです。同プロダクトは、DSP、DMP、オーディエンス分析サービスがワンセットになっています。DMPの中には、Supershipのオーディエンスデータが蓄積されていて、それを利活用できる環境を提供しています。
同プロダクトを構成するサービスのひとつ、「ScaleOut DSP」も、DMPに蓄積された弊社が提携している高精度のオーディエンスデータを活用した配信、アプリ面も含めたスマートフォン領域への配信実績が評価され、順調にシェアを伸ばしております。
渡邉:楽天は国内最大規模の消費行動分析データを保有し、既存プロダクトである「楽天DSP」において、主にWebの領域でそのデータを活用可能な環境を提供してきました。そして、今回「ScaleOut Ad Platform」の技術提供を受けスマートデバイス領域を強化することができました。
――今回、連携を開始するに至った背景や目的は何だったでしょうか。
小林:Supershipは様々なデータを広告配信に活用していますが、そのほとんどがスマートフォンに関わる情報です。
先ほどお伝えしたように、私の所属するビジネス開発部はクライアントのデータの利活用を推進する部署です。PCユーザーのデータに強みを持つ楽天様と取り組みを強化することで、PC領域もカバーしたいという狙いがあります。
消費者接点の構築を支援できるソリューションを
――楽天が強みとするPC領域のデータを活用して、スマートフォンとPCの両方をカバーしていくという形ですね。渡邉さんはいかがですか?
渡邉:楽天は膨大なデータを保有しております。しかし、若年層へのリーチについては不足している部分があり、広告配信においてスマートフォン領域を強化するということは課題のひとつです。今回、両社が組むことによって、大きなインパクトが生まれるのではないでしょうか。
――楽天の消費行動分析データと、Supershipの大規模オーディエンスデータ、テクノロジーを組み合わせることで、どんなことが可能になりますか。
小林:今回の取り組みでやりたいことのひとつが、クロスデバイスでのユーザーコミュニケーションです。
渡邉:これまで、アプリとモバイルWebの間での消費者行動の紐づけが難しく、ブランディング目的のアプリ内広告については、そのパフォーマンスを正しく計測することが難しいという課題がありました。それゆえアプリ内広告はアプリインストール広告偏重の傾向があり、ブランディング目的での利用に消極的な考えを持つ広告主様が多くいらっしゃいます。
たとえば、アプリ内に動画広告を出した後の顧客行動を調べたいというニーズがあっても、これまでは追い切れませんでした。今回のサービスでは、アプリ面も含めたオーディエンスターゲティングや、統合レポーティングが可能になりますので、そういったお悩みも解消できるのではと考えております。
データを掛け合わせればライフログ的な深みが出る
――従来のオーディエンスデータはスマートフォンのWeb面では有効ですが、アプリ面では活用しづらい。また、消費者動向に合わせたシームレスな接点構築が難しい環境にあったということですね。今回、それぞれの会社をパートナーとして選んだ理由を教えてください。
渡邉:楽天DSPという取り組みにおいて、広告主様が楽天を選んでくださるのは、クッキーなどの類推ではなく、IDに基づいた購買や閲覧情報の分析から得られる精緻な属性データがあるからです。Supership様も同様に、グループ会社を含む正しい情報をお持ちなので、今回組ませていただくことになりました。
小林:両社が持つデータの質、データの量という部分を考えれば、お互いが組むことでより大きなインパクトを生み出すことができます。両社の強みを生かすことで、主にスマートフォン領域における消費者接点構築を支援できるソリューションを開発していけると思います。
渡邉:両社のデータを掛け合わせることで、ライフログ的な深みも出てくるはずです。
小林:そのためのステップとして、スマートフォン領域において、アプリ面、Web面でユーザーがどのように動いているかを把握する必要があります。出来ない前提で課題認識をされていないマーケターの方もいらっしゃいますので、まずは事例と共にアウトプットの結果をマーケットに訴求していきたいと思います。
ユーザーの動きを正確に捉えるために必要なテクノロジー
――今回の取り組みにおけるSupershipの役割について教えてください。
小林:私たちの役割は、スマートフォン領域のデータの補強とプロダクト側からの技術提供です。
――クロスデバイスでのユーザーの動きをトラッキングするために必要なテクノロジーは何ですか。
小林:マッピングテーブルと呼ばれているものがあって、PC、スマートフォン、モバイルIDを横一列で見ることでユーザーの消費行動をより精緻に可視化することができます。楽天様は特にPC領域のデータをもっていますので、それを生かすことのできるプラットフォームの開発がさらに必要になると思います。
――両社のマッピングテーブルをマージすることで、より正しいデータが多く蓄積できるということですね。
渡邉:はい。データには、ファーストパーティデータに基づく決定論的なID(Deterministic ID)と、確率論的なID(Probabilistic ID)があります。どれだけ決定論的なデータをもっているかで、広告精度が変わっていきますから、そこが私たちの強みになると思います。たとえば、複数のタブレット2台とスマートフォン2台とPCで利用しているユーザーが同一であることも導き出せることになります。
――膨大なデータを持つ両社の取り組みにおいて、意識した点はありますか。
小林:現状として、マッピングテーブルというところで、お互いのデータを掛け合わせ切れていません。それぞれのビジネスがある中で、お互いが組むメリット、デメリットを検討しながら進めていました。
データというものは非常にセンシティブなものです。ユーザーに不利益はないのかという部分には時間をかけ、ユーザーのプライバシーについても慎重な取り扱いを心がけています。
――ありがとうございます。次回の記事では引き続き、両社の取り組みのより具体的な話を掘り下げていきます。お楽しみに。