真のO2Oはデジタルマーケティングを根本から変革する
O2Oという言葉の意味が変わりつつある、と高山氏は講演の口火を切った。元々O2Oは「オンラインtoオフライン」、つまりオンラインからオフラインに対して顧客を送り込むことを意味していた。具体的には、オンラインでクーポンを発行することや、オンラインで特定の商品の店舗別在庫状況がわかるようにすることで店舗への集客を促進することがO2Oの典型例だった。
近年はそれに加えて「来店計測」を行うことが技術的に可能になり、来店者数や来店者のデモグラフィック情報が「見える化」できるようになった。こうした背景から、今回の講演では、通常の「オンラインtoオフライン」という意味のO2Oではなく、真にオンラインとオフラインを融合させた取り組みとしてのO2Oの課題と解決策を紹介していく、と高山氏は語った。
Web施策がREAL店舗に貢献しているかがわからない
O2Oマーケティングの理想は、オムニチャネル状況のなかでどの接点においてもユーザーを理解し、最適なコミュニケーションを行うことにある。しかしながら、その理想に至るまでにはまだまだ課題が山積しているのが実情だ。
高山氏はクライアントにヒアリングをする中で「アプリ内で様々な施策を実施しているものの、実際にどこまで来店につながっているのかがわからない」という悩みに接することが多いという。
「施策がWebで完結しているために、店舗への送客に何が効果的なのかわからない」という課題も少なくない。高山氏はある自動車会社から、Web上で見積もりをとれる仕組みを入れたが販売台数の増加につながっているのかわからない、という相談を受けたことがあるそうだ。
もう一つの課題として高山氏が指摘するのが、「ロイヤルユーザーの行動はわかっていても、ライトユーザーに対してどのような施策を打てばいいのか見えない」というものだ。流通業の例を挙げると、最近の施策はアプリ中心に行われているため、どうしてもロイヤルユーザーに偏りがちだ。そうしたユーザーのボリュームは限定的だと言わざるを得ず、したがって最も狙いにいきたいボリュームゾーンであるライトユーザー層、浮動層の行動が見えず施策も打ちづらいという悩みがあるのだ。
広告は嫌われるのに、フリークエンシーも必要というジレンマ
他方で、生活者の視点に立ったときアドブロックの問題は無視できない。海外では4億ほどのモバイルデバイスがアドブロックをしており、今後も増える勢いだ。日本ではまだそれほどアドブロックは広まっていないが、今後伸びてくることには疑いの余地がない。広告に抵抗感がある生活者が増えてきているといえる。
しかし、O2O施策としては来店を実現するにはフリークエンシーを上げないと効果が期待できないこともわかっている。O2Oマーケティングは、広告に対する抵抗感は強まっているが、来店を実現するには広告を何回も配信しなければならないというジレンマに直面している。これを解決するには、「適切な人に、適切なメッセージを届ける」という基本を貫くことがカギになってくる。そのためには、WebとREALの両方の世界において、生活者を理解し、統合的なコミュニケーションを行うことが極めて重要だ。
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オンラインとオフラインの「融合」を実現する4つのソリューション
では、これらのO2Oの課題を解決するには何をすべきか。シナラシステムズが提供しているソリューションとして、高山氏は次の4つを挙げた。
- WebとREALを横断したカスタマージャーニーの可視化
- 業界全体に対する自社のShare of Visit
- WebとREALを横断した顧客のエンゲージメント
- 商品が置かれている売り場と自社サイト訪問者のGAP分析
1点目と2点目が現状分析のメソッドであるのに対して、3点目は顧客とのコミュニケーションをWebとREALで統合して最適化するための方法論となる。4点目は自社店舗を持たないメーカーが対象で、流通と自社サイトそれぞれの訪問者の属性を比較することで施策を改善するやり方を紹介する。
Web上のCVがREAL店舗での成約につながっているのかがわかる!
まず、高山氏はWebとREALを横断したカスタマージャーニーを可視化する必要性を述べた。具体的には、生活者が複数あるタッチポイントをどの順番で通過していくのかを把握することが大切だ。
たとえば、広告に接触しクリックしてサイトを訪問し、訪問したサイトコンテンツの深いディレクトリで詳細な商品情報に触れ、最終的に資料請求を実施し、それからある程度時間をおいて来店する。このようなカスタマージャーニーの順番を、正しく把握することが準備として欠かせない。
シナラシステムズのマーケティングプラットフォームは、計測タグを通じて広告接触者やサイト訪問者を計測することができる。同時に、Wi-Fiアクセスポイントが設置されている各店舗を対象に、スマホ端末の電波強度および一定間隔における検知回数を判断材料として、自動的に店の中と外にいる人を判別できる。
この機能を活用することによって、自社店舗への来店者を計測し、広告接触から来店までの行動を可視化することができる。この仕組みによってWebとREALを横断したカスタマージャーニーの可視化を実現できる。
次に、サイト上のどのコンテンツを見せれば一番来店につながるのかを把握していく。そして最後に、そもそもWeb上のコンバージョンポイントが来店を実現するために必要なのかどうかの検証を行うことが重要だ。
例として、不動産業界の場合を見てみよう。成約件数をあげるためにどのようなWeb施策を実行すれば良いのかという課題がまずある。その先には、問い合わせがあったとしても成約に至らなければ売り上げにならないのに、ひたすら問い合わせ件数を増やすばかりでよいのか、というより深い課題が生じる。
これらの課題に対しては、Web上のデータと来店データをつないだうえで来店率や成約率に注目することが有効だ。サイト上でどの物件を見せれば来店率が最も上がるのかを調べたり、「比較検討」「問い合わせ」「来店」といった各ステージをどのような順番でたどれば成約につながりやすいのかといった検討を行ったりすることで、コミュニケーション全体を改善できる、と高山氏は語る。
業界全体に対する自社のShare of Visitを把握せよ
第二に、業界全体の来店人数に対する自社店舗への来店人数の比率を表すShare of Visitを把握することが重要だという話がなされた。
シナラシステムズのプラットフォームを活用して自社店舗への来店者を計測し、業界全体の来店人数で割ればShare of Visitが算出できる。この指標を活用すれば、競合他社の動向をふまえたうえで自社への来店者数が多いのか少ないのかをモニタリングすることができる。
高山氏が考える、広告で大切なこととは「あまりホットでない人たちをホットにすること」だという。これをREAL店舗に置き換えると、来客者を競合に奪われていないかどうか、奪われていたらどのように取り返すかという視点が重要だということになる。
たとえば、前期に比べて自社の来店者数が落ちているとき、自社だけの話なのか、それとも業界全体で落ちているのかを知る必要が出てくる。このときShare of Visitが下がっているとすれば、自社への来店者数だけが落ちてきている可能性を疑う必要がある。
なお業界によっては、初回来店が必ずしも購入にはつながらないという特性があるため、来店後のタイミングでその顧客が競合に奪われないようにすることが重要だと高山氏は語る。
自動車業界の例でいえば、来店シェアで見たときに競合ディーラーに奪われた顧客がどのような属性を持っているのかを調べ、その後の施策に活かすことが有効だ。たとえば、ターゲットの位置情報が山の近くでよく検知されるとすればターゲットはキャンプ好きだと推測できるので、自社ディーラーに来店したタイミングでキャンプ愛好者に訴求するメッセージを打っておけば、競合ディーラーに顧客を奪われずに済むかもしれない。
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そのCRM施策、WebとREALで分断されていませんか
第三は、WebとREALを横断した統合的なコミュニケーションによる既存顧客のファン化についてだ。ここでは、オンラインとオフラインで連携したコミュニケーションができているかどうか、ECとリテールの両部門が手を携え横断的に新規顧客獲得と既存顧客のファン化を行えているかどうかが問題になってくる。
ECと実店舗の両方を利用している顧客が理想だとした場合、ECのみ、または店舗来店だけの顧客にもう片方も利用してもらいたいと考えるのが通常のケースだ。その際に考えられるのは、ECだけを利用している顧客が実店舗周辺にいる時に実店舗にしか売っていないアイテムをレコメンドするといった施策や、店舗のみの利用者に対して、店舗営業時間以外や近くに店舗がない場所にいるときに、ECの特典をレコメンドするといった施策である。
理想としては、ECと店舗の各部門がバラバラに新規ユーザーやヘビーユーザーにリーチしていくのではなく、ECと店舗の両方の顧客データをもとに自社のビジネスにとっての全体最適を実現していくのが望ましい。
たとえば、店舗で購入している顧客がECで購入しないからと言って、EC側から新規ユーザー向けの施策をあててしまうような無駄は省き、新規向けの施策はブランド全体で見た時の真の新規顧客に絞るべきだ。
こうした横断的な施策を実現するには、ECでの購買データとREAL店舗への来店データの両方をひとつのプラットフォームで管理することが必要であり、通信キャリアのデータでWeb行動とREAL行動の両方を把握できるシナラシステムズだからこそできることだ、と高山氏は語る。
自社サイト訪問者とREAL店舗来店者のGAPにチャンスあり
第四に、自社店舗を持たないメーカー向けの施策として、商品が置かれている売り場と自社サイト訪問者のGAPを分析する手法がある。
具体的には、自社商品が置かれている流通チャネルにおけるロイヤルユーザーの属性や、自社商品が置かれているチャネルごとの属性の違い、自社サイト訪問者と主力チャネル来店者の属性の違いを知ることが施策として有効だ。
たとえば、化粧品メーカーであれば、自社商品を扱っている薬局を訪問するユーザーの属性がわかり、自社商品サイト訪問者の属性と異なることもわかったとすれば、薬局を訪問するユーザーの属性にフォーカスしたクリエイティブの広告を配信したりPOPを展開したりすることで事前訴求の成果が期待できる。商品特徴やブランドの世界観を伝えるコミュニケーションに加えて、流通ごとによりカスタマイズされたアプローチを行うことによって、より購入を促進するわけだ。
いずれにしても、来店者のデータをWebのデータと統合できるプラットフォームを整備できるかどうかが真の意味でのO2O施策を実現するための前提条件になる。
REALデータで顧客を理解し、施策全体を見直す
高山氏は講演をまとめるにあたって、広告が嫌われがちだが何回も広告でリーチしなければ顧客を動かせない時代にあっては「まず自分の相手を理解すること」「相手に適したメッセージを届けること」が重要になってくると改めて主張した。顧客は、自分が興味のある話題であれば、広告でも受け入れてくれる。だからこそ、顧客を知るためにWeb上のデータだけでなく来店のデータも統合して見極めた上で、どの施策を実施すれば来店につながるのか、既に実施されている施策が本当に成功パターンなのかどうかを吟味することが必要になってくる。
特に、必ずしもWebでのコンバージョンはREALな店舗での成果に直結しないことにはくれぐれも注意すべきだ。Webのデータだけではわからなかった来店という軸でコミュニケーション全体を見直し最適化することが重要である。
そこで必要になるのが精度の高い位置情報データであり、そのデータを実施に移せる軸で分析し、得られた発見をアクションにつなげることだ。これら位置情報に基づくデータの取得・分析からアクションまでを一貫して行えるのがシナラシステムズのマーケティングプラットフォームの強みであると高山氏は語り、講演を締めくくった。
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