「お客様の『困った』」と「企業の課題」を同時に解決する
ここまで見てきたように、オイシックスのMA活用は、ともすれば実体のない「建て前」になりがちな「顧客中心」という理想を、組織的に実行するための工夫の宝庫だといえる。
「過剰なおもてなしをMAで自動化するのではなく、お客様が『困った』と感じる状況を打開することに重点を置きました。企業がMAを通じて目指すべきは「お客様の『困った』と『会社の課題』を同時に解決するコミュニケーションなのです」(米島氏)
その典型例が、「変更し忘れ通知」だ。これは、来週届く食材の注文変更をうっかり忘れている顧客に対して、その顧客が優先的かつ頻繁に確認するチャネルを通じて「変更し忘れ通知」を配信するもの。この取り組みによって、注文の変更を忘れがちだという顧客の課題と、解約を防ぎたいという企業としての課題が同時に解決できたのだ。
「食べ方お知らせメール」も同じパターンの成功施策。珍しい食材の調理方法や、滋味豊かな食材を存分に味わえる食べ方を、該当する食材を購入した顧客にメッセージ送信する取り組みだ。これもまた、商品の食べ方がわからないという顧客の課題と、食べ方がわからないと再注文につながらないという企業としての課題の両方を一度に解消する施策だった。
この例からもわかるように、MAでまず始めるべきコミュニケーションは必ずしも複雑なシナリオである必要はないのだ。オイシックスの取り組みを見ると、顧客の課題・会社の課題を抽出し、それをMAでどう解決できるかを考えることから始めるとうまくいくことがわかる。
CCMPをはじめとするMAのメリットは「こういうコミュニケーションを取ればうまくいく」と考えたことを、実行しやすいことにある。実行して、検証して、見直すというPDCAサイクルを、人力では到底実現できないスピードで行うことに醍醐味がある。
最後に米島氏は、「お客様のデバイス、接触メディア、コミュニケーション手段に合わせてMAでカバーするチャネルを増やしていきたいと考えています。将来的には、メッセージを決めれば自動的に最適なチャネルでお客様のもとに届くように、MAツールが進化していくことを期待しています」と展望を語り、講演を締めくくった。