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「メディアに載る=生活者に響く」時代は終わった~広報・PRの効果計測に求められる新たな指標とは

 その時々の時流に合わせ、コンテンツがシェア拡散される理由を分析してきた本連載。今回は、広報・PR施策が抱える問題を洗い出し、それを解決するのに役立つ新たな指標「エンゲージメント数」について解説します。

「メディアに載る=生活者に響く」時代は終わった

 こんにちは、スパイスボックス副社長の物延秀(もののべ しゅう)です。その時々の時流に合わせ、コンテンツがシェア拡散される理由を分析してきた本連載。過去記事では、国内で最もシェア拡散した様々な広告事例の解説のほか、広告に限らず映画、音楽、選挙、メディアなど、幅広い視点でコンテンツがシェア拡散される理由や背景を紐解いてきました。(連載記事の一覧はこちら)。

 今回は、企業や商品の話題を生活者に届けるための手法として一般的な、広報・PR施策の効果分析の最前線についてお話ししたいと思います。

 前回の記事「生活者の“本音”を読み解く、『ソーシャルリスニング』の新活用法」の冒頭でもお話しした通り、ここ十数年で生活者を取り巻く情報環境は大きく変化しています。スマートフォンやSNSの登場により生活者が接触する情報量が爆発的に増える一方、個人が処理できる情報量は変わらないため、企業がマスメディアなどを利用して大量かつ一方的な情報発信を行っても生活者に届きにくくなっています。

 SNS時代に企業が伝えたいメッセージを、適切な相手に届けるためには、生活者の間で能動的に“語られる”ことで、生活者の間に自然と広がるような情報戦略設計が必要です。

 こうした環境変化がありながら、企業が行う広報・PR施策は、企業や商品情報を生活者に届けることを目的としつつも、いまだに「いかに有名マスメディアに数多くの情報を取り上げてもらうか」に主眼を置き続けています。

 今や「メディアに載る=生活者に情報が響く」とは限らない時代になりつつあるなか、広報・PR施策のあり方そのものや、その効果分析の手法も新しい形が必要ではないでしょうか?

現状に合わない、“メディア掲載数”と“広告費換算”

 そもそもPRとは、「企業や団体とそれを取り巻く社会、生活者との良好な相互関係の構築」が目的の活動です。しかし、これまでメディアに露出させることが活動の中心だった広報・PR施策のパフォーマンス測定は、メディアの種類や掲載数、広告費換算でしか行われてきませんでした。これでは「量」の計測にはなっても、メディア露出によって生まれた“企業と生活者の新たな関係性”の「質」はまったく不明確なままです。

 また、その「量」に関しても、テレビや新聞、雑誌、Webでは状況が異なります。テレビでは、「電波におけるその時間帯の視聴率」、新聞、雑誌であれば「発行物が手元に届く読者数」から推計するため、実際に生活者の目に触れたリーチ「量」としては信ぴょう性があります。しかし、Webに関しては、露出した記事そのもののPVはメディアが教えてくれない限り第3者が知る術もありません。そのため、世に出回っている推計値はとても信ぴょう性の低い数値と言わざるを得ません。

 広告費換算に関しても、Webメディアでの露出に関しては、本来であれば掲載面の実質的なPV数とメディアごとの広告媒体価値としてのPV単価を掛け合わせて算出すべきです。しかし、実際には掲載面と似た広告枠の出稿料から割り出しています。このことから、特にWebメディアでの露出に関しては、「量」「質」ともに費用対効果の分析の精度には大きな疑問が残ります。

 メディアに取り上げられれば生活者に情報が届き、態度変容を促していると信じられた時代に生まれた「掲載媒体数」や「広告費換算」などのざっくりとした効果指標は、今では完全に時代遅れとなっています。

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この記事の著者

物延 秀(モノノベシュウ)

スパイスボックス 副社長。2006年スパイスボックス入社。プロデューサーとして大手企業のデジタル・コミュニケーションをワンストップで支援し、2012年以降はソーシャルメディアを中心とした「共感」と「話題」を生むコンテンツのプランニングとプロデュース、自社ソリューション開発を統括。2016年に事業統括責任者および執行役員に就任。2017年より現職。自社サービス:インフルエンサーマーケティング支援「TELLER」、コンテンツマーケティング支援「BRAND SHARE」、ROI分析プラットフォーム「THINK」、自社メディア:「newStory」自著:『新ヒットの方程式』~ソーシャルメディア時代は、「モノ」を売るな「共感」を売れ!~(宝島社)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/07/04 08:00 https://markezine.jp/article/detail/26710

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