広告ブロック機能の良し悪し
安成:4つ目の質問です。
「広告ブロック機能の普及についてどう考えられていますか?」

有園:普及したほうがいいですね。一ユーザーとしても、不必要な広告はブロックしてほしいですから。広告主からすると戸惑うかもしれませんが、リターゲティングに失敗している嫌がらせのような広告は役に立っていませんし、広告はもっと役に立つものになるように注力されなければいけませんね。
森:個人的な意見としては、生活者主導の広告ブロックによって、生活者自身にとって役に立つコンテンツとそれを提供するメディアが残ること、そしてそこに適切な広告が表示されるようになるのはいいことだと考えます。
今はデジタル広告とトラディッショナル広告が分断していますが、デジタルあるいはテレビのどちらかが絶対に有利ということはありません。目的によって正しいアロケーションがありますから、デジタルでの広告ブロックが当たり前になることは、広告主もエージェンシーもよりふさわしいメディアプランニングを考えるきっかけになると思います。
代理店に丸投げしてもいいのか
安成:5つ目の質問です。
「DMPに関して、そもそも正しく使えている企業が少ないと感じています。また、代理店は広告の効率化ばかりで、分析会社はデータウェアハウスとDMPを混同しているように思います。代理店に丸投げする企業が多い日本はますます世界から取り残されていくのではないでしょうか」
有園:DMPに正しい使い方というのはなくて、企業ごとに異なります。メール配信、DSPと連係した広告配信、ランディングページの最適化、プッシュ通知、様々なことができますが、企業によって目的が違うので必要なことも優先順位も違いますよね。
あと、DMPの導入をお手伝いしたことがありますが、導入して劇的に売上が伸びるかと訊かれたら、正直に「そこまでは伸びません」とお答えしています。ただ、200%は難しいですが、それでも20%ほどは向上するでしょう。ですので、DMPを用いてブランド戦略をきちんと考え、新しい商品をターゲットに提供していくことが重要になります。
代理店への丸投げに関しては、現時点ではそうしたほうがいいと思っています。社内にDMP領域の専門的な知識を持っている人はほとんどいないでしょう。ですので、中途半端に内製化するより丸投げしてしまったほうがいいんですよ。ただし、クライアント側に指揮を執れる人がいなくては、プロジェクトがうまく進むことは難しいでしょう。
チャットボットの管理を効率化するには
安成:では6つ目、最後の質問です。
「チャットボットの導入で仕事の効率化が進みつつも、シナリオの管理など複雑な作業が増える面もあります。チャネルが多様化する中でコミュニケーションデザインを何通りも用意する管理コストが懸念されます。より効率的に管理を行うにはどうすればいいでしょうか」
森:まず、日本のデジタルやテクノロジーに対する投資は欧米に比べるとかなり安いので、もっと投資したほうがいいです。生活者のデジタルとの接触は増える一方ですから、今のままだと勝てなくなります。
チャットボットなどを効率的に管理する方法はあるんでしょうが、それより重要なのが投資です。前年踏襲ではなく、新しいテクノロジーがどれほどの価値を生み出すのかを定期的に検討し、対応するのがいいと思いますね。

有園:率直に言うと、効率的に管理する方法はありません。大変なんです。ただ、どの時点を起点とするかで変わりますね。たとえば、僕はかつて検索連動型広告の運用をしていたことがあります。
2004年頃のGoogle AdWordsをご存知でしょうか。30分ごとにキーワードに100円、110円と手動で入札していたんですよ。それが2014年になるとほとんど自動になって、相当楽になりました。ですが、それ以外にDSPやFacebook、Twitterなど新しいプラットフォームが登場したので、また別に考えないといけないことが増えてはいます。
このように管理は次第に楽になっているものの、それ以上のスピードで新しいテクノロジーやツールが生まれてくるので、48歳の僕はもはやついていけません(笑)。
※本記事は定期誌『MarkeZine』の読者限定イベントvol.3にて行われたパネルディスカッション「テクノロジーはマーケティングに何をもたらし、現実をどう変えるのか」の内容を編集したものです。