主力事業領域は「自己投資産業」
―― そういった、人が変わることを手助けする事業を広範に捉えると、どういう事業領域になるのでしょうか?

我々は自分たちの事業領域を「自己投資産業」と定義しています。ライザップゴルフ、ライザップイングリッシュも、同じです。
トレーニングジムの会社がなぜ英会話、とも言われましたが、我々の考えではそこに違いはありません。一貫して、自己投資の領域を見据えているのです。生活必需品ではないけれど、その商品やサービスがあることで、あるいは努力して理想の状態を手に入れることで、自分が輝き、人生が楽しくなる。心理学の「マズローの欲求段階説」で言うと、一番上の「自己実現欲求」ですね。ここにフォーカスした自己投資産業で、グループ全体でグローバルNo.1になることを目指しています。
生活必需品をそろえ、衣食住をまず一定水準にしようというのは、戦後の日本や発展途上国の市場環境です。それに対して今の日本はどの市場も成熟し、衣食住も満足するレベルに変わっています。単に機能を満たせばいいのではなく、服だったら自分の存在価値を高めるもの、食ならおいしいのは当たり前、健康や美容といった付加価値を求める方も多くなっています。住まいにしても、人生の質を高める提案でないと受け入れられません。我々は、そういったニーズを自己投資の産業として捉え、それに応えられる企業グループとして成長したいと考えています。
三日坊主を防げればダイエットは成功する
―― では、事業の原点のお話をうかがいたいのですが、瀬戸さんは創業社長として、はじめにダイエット食品の会社を立ち上げたそうですね。「変われる」というキーワードは、その当時から見出していたものなのでしょうか?
そうですね。正確には、もっとずっと前の個人的な経験からなんです(笑)。高校生のころ、152cmで70kgオーバーの女の子に告白されてつきあうことになり、ダイエットをサポートしたんです。一緒に走ったり、停滞期も励ましたり。そうしたら3ヵ月で30kg痩せて、きれいになったのはもちろん、明るくなってよくしゃべるようになり、服装も変わって部屋まできれいになった。最終的には振られたんですが(笑)、人って痩せるだけでこんなにも変わるのかと驚いたのが、原点ですね。
自分の力をもっと大きなフィールドで試したいと思って、24歳のときに起業しました。自然と思い浮かんだのが、昔の彼女が辛そうに食事制限をしていたことでした。私の実家がパン屋を営んでいることもあって、水を吸うと膨らむおからを使った豆乳クッキーを開発し、商品とともに食事の代わりに食べる「豆乳クッキーダイエット」を打ち出しました。
これがかなりヒットしまして、2006年の上場に漕ぎ着けました。以降、もちろん競合商品が登場したり、経営的に厳しい時代があったりもしましたが、先ほどお話ししたような軸で美顔器の会社などをM&Aして、事業を拡大してきました。
ライザップの成長にも、高校生のときの原点が大きく関係しています。私も、創業したときにタバコを止めて太ってしまい、ダイエットをしたのでわかるのですが、一人だとダイエットを続けるのは難しいんですよね。三日坊主になってしまう。
―― 確かに! 一人で続けるって難しいですよね。
商品には自信がありましたが、ダイエットの一番の失敗はやり方ではなく、三日坊主になることだったんです。彼女は私が常に寄り添って励ましたことで成功したのではないか、でも本気で励ましてくれて、辛いことも一緒に乗り越えてゴールに向かう、トレーナーが併走してくれるようなサービスって世の中にないなと思ったんです。それが、トレーナーがマンツーマンでしっかりサポートする、ライザップのパーソナルトレーニングにつながりました。
英会話やゴルフも三日坊主になりがちですよね。その点でも、“三日坊主マーケット” にはライザップのノウハウが活用できます。ただし裏を返せば、三日坊主になるのを防いで継続を促す先には、結果が出ないといけません。お客様が求めるのは結果ですから、必ず結果を出すサービスにしようと考えました。