東南アジア進出は将来の投資も兼ねる

今回紹介した展開動向は、物理的な拠点の有無をベースにしている。ネット広告業界は、物理的な参入障壁が他業種よりも低い。またネット広告のプログラマティック取引の普及により、異なる国や地域の事業者間連携も拠点はないものの、比較的容易に全域を対象にしたサービス提供が物理的に可能である。
だが拠点があるということはその国に根差した活動をしていることの証左であり、顧客や事業パートナーから得られる信頼性の高さも段違いであろう。どこの地域や国においても言えることだが、東南アジアの各国の文化や商習慣、ユーザー動向は様々だ。これを理解する上で、やはり拠点を置くことの有無は大きい。
東南アジア地域は、日本企業のみならず欧米企業や中国・韓国などの東アジアの企業による参入も今後増えてくるであろう。豊富な資金を持つ中華系、韓国系の企業による現地有力事業者の買収などによる参入も今後加速する可能性も見込まれる。
前回の記事でも紹介したように、この地域はFacebookやGoogleのシェアが日本よりも高く残されたパイも限られており、日本の市場よりも厳しい競争環境にある。また日本企業の進出が増えることで、日本企業同士の競争も生じる。
しかしながら同地域を押さえることは、現時点の収益拡大のみではない。企業のネット広告を使ったマーケティング・プロモーション需要のボーダレス化が今後もさらに進んでいくなかでの、将来を見据えた先行投資ともなり、重要性の高い活動として引き続き位置付けられよう。