エンゲージメントの高さでセグメント

長瀬:デジタルを駆使して顧客を知っていくと、最近だとインスタ映えするパッケージが重要だとか、ナイトプールで女子高生がメイベリンを使っているのがウケる、とかがわかってくるので、バナー云々よりもそうした実態を踏まえた策を模索するほうがずっといいわけです。
有園:ちなみに、ソーシャルマネジメントプラットフォームの「Sprinklr(以下、スプリンクラー)」は入れていますか? ソーシャルを中心に顧客データを集め、クッキーとSNSアカウントをつなげて、潜在顧客を狙って広告配信ができるという。
長瀬:入れています。これは僕が就任してすぐに提案し、日本主導で導入を進めました。数カ月前に、グローバルのロレアルでも契約されましたよ。
有園:そもそも目的買いが多く、大量に認知を取りにいく必要がないブランドは、ビューアビリティもアドフラウドも関係ない。そういう発想だと、エンゲージメントの高さでセグメントできるスプリンクラーは有効だろうと思ったんです。
長瀬:まさに、カギはエンゲージメントです。それを生み出すには、接点の持ち方やコンテンツの内容、シェアする人などが重要です。なので今まさにオウンドメディア、@cosmeさん等のタイアップページも含めて、自社でコントロールできる場所のコミュニティマネジメントに力を入れていく考え方でいます。
コスメビジネスではなく、コミュニティビジネスへ
有園:なるほど。ブランド企業がオウンドメディアに注力し、そこでコミュニティを作る流れにはすごく注目しているんです。そうなると、もはやマス広告に頼らず、ブランドのファンにいつでもリーチできる。
長瀬:わかります。そう考えると、僕らの将来もコスメビジネスじゃなくなるよね、という話も出てくる。プラットフォーム事業かコンテンツ事業か、コミュニティベースのビジネスが主体になって、その一貫でコスメを売るようになったら、いちばん重要なのはコミュニティマネジメントですよね。
歴史あるブランドをいくつも抱えているので、ストーリーを抱えたコンテンツならいくらでも生み出せるのは強みです。今後はそれを活かしたコミュニティの拡大を考えていきたい。日本人は欧米人と比べて“宣伝色”に敏感なので、その点でも一層、コミュニティマネジメントが重要だなと。
有園:化粧品にはHow toもそうですし、メイクによって元気になるとか、単なる商品購買を超えたいろいろな要素があるから、自社のメディアに潜在顧客と顧客の両方に来てもらって行動や購買データを取れば、かなり厚い情報を得られそうです。そこからまたニーズを汲んでコンテンツを発信し、一連の中で販売もする。結果的に、コミュニティマネジメントが将来のビジネスの根幹を握る流れが見えてきますね。
長瀬:特に日本では、絶対そうなると思います。僕は10代を海外で過ごして日本の大学に来たんですが、日本の大学のサークルの多さとかはすごい(笑)。クローズドで小さなコミュニティだけど種類は豊富。独特の文化圏だと感じます。