現場感覚を取り入れ、部署ごとのプロジェクトに
体験にフォーカスした施策とはどのようなものだろうか? スバルのカスタマージャーニーは大きく認知・購入・利用の3つに分けられており、顧客に対し、様々な部署がクロスして関わっている。

たとえば、販売促進部門が認知から購入までを担当し、購入以降の利用においては、アフターサービスを行うカスタマーセンターと全国のスバルディーラーが担当する。小島氏の所属するマーケティング推進部は、ディーラーも含めた顧客接点全体に対し、認知や商談・購入体験の支援を行う。また、スバルネクストストーリー推進室は、購入以降の顧客全体に向けての施策シナリオを描く。
「カスタマージャーニーは組織横断のプロジェクトをつくって、ポイントを抽出し改善するという話が多いと思います。しかしスバルの場合は、すでに各部署が課題を理解している状況でした。そのため、まずは部署ごとに自分たちの課題を改善していくかたちで運営しています」(小島氏)
小島氏も当初は組織横断的な取り組みも考えたという。だが、部署連携などの試行錯誤を繰り返した結果、このかたちに落ち着いた。
CMとWebで顧客に寄り添うスバルを「認知」
ここからはカスタマージャーニーについて、それぞれの具体的な施策をあげていきたい。
まず「認知」のフェーズでは、主にWebサイトとSNS、そしてテレビCMを活用している。
Webサイトはユーザビリティを重視し、独自の制作ガイドラインを作成。今後も閲覧環境やユーザー動向に合わせて、デザインや見やすさを改善していく予定だ。公式のSNSは、FacebookとTwitterを運用。Facebookはブランディング、Twitterはユーザーとのコミュニケーションを重視している。
テレビCMについては“スバルはこんなことを考えているんだ、いいな”と思ってもらいたいと小島氏は語る。
「自動車の買い換えサイクルを考えると、CMをご覧になっている方のほとんどが“いますぐに車を購入する・買い換える予定のない”方です。そのような方が見ても印象に残るようなクリエイティブにしています」(小島氏)
たとえばフォレスターのCMは家族で星を見に行くというストーリーだ。自分が趣味を通して良い体験をする、その体験を家族、特に子供と共有したいという姿に愉しさを感じてもらうことが狙いである。
また、運転支援システム・アイサイトの機能訴求CMでは、安全技術やその機能を前面に出すのではなく、安全に車を運転したいという実際の顧客インサイトに寄り添い、その気持ちに応えたくてアイサイトを開発したというメッセージを込めている。