「マスカスタマイゼーション」と「シェアリング」の波
重要なのは体験だ。Thoma氏は運転免許の取得が大きく減っていることに触れながら、「ミレニアル世代は物を取得したくない。関心は所有ではなく体験にある」と述べる。どうやって販売するのか、エンゲージするのかを変える必要があるとした。
1つの鍵となるのが、マスカスタマイゼーションだ。Nikeのカスタマイズ可能なスニーカーが約500ドルで販売されるなどの事象を取り上げ、「製品と体験が(バラバラのものではなく)1つになる。消費者はこれを期待している」とする。
ステージに招かれた調査会社Constellation Researchの創業者兼会長兼主席アナリスト、Ray Wang氏はマスカスタマイゼーションについて、具体的に「コンテキスト(位置、時間、ID、関係、センチメントなど)の理解」「選択肢の提供」「分析」と3つがポイントとした。「選択肢の提供は重要だ。全ての選択肢が、需要を測るシグナルになる」とWang氏は指摘する。
もう1つの鍵はシェアリングエコノミーだ。所有する代わりにシェアするーー実際にUber、Airbnbはそれぞれ車と空室を所有しないビジネスモデルで成長した。高級自動車のPorscheもサブスクリプションモデルを持つ。このようなサブスクリプションは、在庫、発注、エンゲージと様々な影響を与える、という。「消費者はサブスクリプションで利用できることを期待している」とThoma氏。製品を売ることからサービスとして提供することにビジネスモデルを変える必要があることを示唆した。
機械学習を強みに、変化への対応を支援する
このような変化を挙げながら、Thoma氏は「SAP Hybrisは支援できる」と語る。そして、機械学習、SAPバックエンドとの統合、ID管理大手のGygnaの買収、サブスクリプションをサポートする「SAP Hybris Revenue Cloud」を紹介した。
機械学習では、大規模なコンピューティングリソースと大規模なデータが不可欠だが、SAP Hybrisはその2つを備えるという。特に後者のデータについては、世界のトランザクションの76%がなんらかの形でERPなどSAPのシステムを経由していると胸をはる。データだけでなく、人事、サプライチェーンなどのソリューションを通じた業界の専門知識やノウハウも強みという。
膨大なデータを活用した機械学習は、コマース、マーケティングをはじめソリューションの全てに共通のレイヤーとして提供する。「センサーなどデータが増えるとさらに意味があるものになる。ロボティクスと機械学習で生産性は飛躍的に改善する」と述べた。

機械学習はSAPが5月に発表した「SAP Leonardo Machine Learning」などを土台とし、
バックエンドのERP(「SAP S/4 HANA」)と連携する。
なお、機械学習と並べて使われる“AI(人工知能)”については、「まだ存在しない。どうなるのかはわからないが、重要になることは間違いない。今から準備できる」と述べた。