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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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「世界一幸せ」なコカ・コーラ社のアーキビストという仕事 ブランドの歴史をマーケティングに活かすには

アーカイブから得たインサイトが、鋭い広告表現につながる

――アーキビストとして、どんな仕事を担当されているのでしょうか。

ライアン:大きく三つに分けてご説明しましょう。一つめは、コレクションの適切な保存方法を策定し、新しいコレクションを集めるという仕事。二つめは、SNSの公式アカウントやウェブサイト「コカ・コーラジャーニー」を通して情報の発信を行うことです。

 そして三つめが、社内や関係者への情報提供です。たとえば、「コカ・コーラ ゼロ」の新しいキャンペーンを行うことになったとします。

 社内のブランドチームと担当する代理店は、チームを結成するとまずアーカイブズへやってきます。そこで私は、「コカ・コーラ ゼロ」の歴史やこれまでの広告クリエイティブなどを紹介するのです。こうしてブランドへの理解を深めてもらい、新しい広告コミュニケーションのアイデアに役立ててもらうのです。

――まさに温故知新というか、ブランドコミュニケーションに関わる人たちがアーカイブズに触れながらブランドの原点に思いを馳せ、クリエイティブにつながる洞察を得るわけですね。

ライアン:デザインチームも、アーカイブズをよく活用しています。また、カスタマーチームが流通業者など取引先を連れてアーカイブズへやってくることもありますし、グッズなどを作成するライセンスチームが情報を得るために使うこともありますね。

 コカ・コーラ社は全世界のマーケットを対象にビジネスを展開していますので、日本のコカ・コーラ社からの質問に答えることもあります。また、イベントをコカ・コーラ社が提供するときは、テーマに沿った展示物や資料を提供することもありますよ。

――ブランドが積み重ねてきたアイデアや文化を集めて使いやすいように適切に管理したものがアーカイブズであり、さらにはアーカイブズをどのように活用するかを模索し、提案するのがアーキビストなのですね。

世界中に散らばるモノを集め、ニーズに合わせて見せ方を工夫

――アーカイブズにはどんなコレクションがあるのでしょうか。

ライアン:「コカ・コーラ」にまつわる価値ある物が、なんでもそろっています。コレクションを保管している棚をまっすぐに並べると、7キロくらいの長さになります。

 アーカイブにはビジネスのために来訪する方を対象に、コレクションを展示する部屋があるのですが、訪れる人やテーマに合わせて、ディスプレイを変えています。たとえば、映画に関係する取引先がきた時には、映画と「コカ・コーラ」というテーマにして、コレクションを飾りました。ポップコーンまで用意したのですよ(笑)

――写真で見るのと実際に物を見るのとでは、印象がまったく違うはずなので、新しいアイデアが生まれますね。コレクションは、どのようにして集めるのでしょうか。

ライアン:収集方法は様々ですが、eBayなどさまざまなオークションを通して買うこともあります。選定基準は、私たちのコレクションに価値を与えるもの、です。

 たとえば、「コカ・コーラ」が載っているデルタ航空のメニュー表もアーカイブズに加えました。1956年の物ですから、コカ・コーラ社とデルタ航空が築き上げてきた長年の関係性を感じさせる逸品です。

――まるで宝探しのようですね。現在、探しているモノはありますか。

ライアン:今はネオンサインを探しています! The World of Coca-Cola(※1)とディズニー・スプリングス(※2)に、「コカ・コーラ」を売るお店があるのですが、壁にネオンサインを飾りたいと言われているのです。でも、まだ見つかっていないんですよね。

 ※1.アトランタにある一般消費者向けのコカ・コーラ社の歴史資料館

 ※2.フロリダ・オーランドのウォルト・ディズニー・ワールド内のショッピングモール

――アーカイブズは膨大で、ごく一部が社内やビジネスパートナーに対して公開されているわけですが、一般の消費者は、そのコレクションを見ることはできないのでしょうか。

ライアン:コレクションを紹介する記事を、コカ・コーラ ジャーニーやSNSのアカウントから発信しています。またThe World of Coca-Colaでも、アーカイブズの中から展示をすることもありますよ。年間120万人の方がいらっしゃいます。

コレクションをデジタル化して、イントラで閲覧可能に

――近年は多くの広告媒体がデジタル化していますが、コレクションの保存にあたってはどのように対応していますか。

ライアン:1990年代の終わりから、コレクションのデジタル化に取り組んでいます。27,000くらいのコマーシャルフィルムをデジタルデータに変換し、30,000くらいの写真をスキャンしてきました。

 デジタル化された素材は、社内および関係者限定ではありますが、社内閲覧システムで見ることができます。

creative Xchange

社内閲覧システムの「creative Xchange」

たとえば「日本」というキーワードにひもづけられたイメージは18,000ほどあり、1,000種類のコマーシャル素材などを見ることができます。

 デジタル化には二つの課題があります。一つ目は、どのような仕様のデジタルファイルにするかということ。二つ目は、今から10年経ってもそのファイルが普通に使えるようにするということ。ファイル形式が古びて、コンピューターによって見えたり見えなかったりでは困るのです。その解決も含めて、私たちはデジタルライブラリーにかなりの時間とコストを投じています。

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/10/31 12:00 https://markezine.jp/article/detail/27290

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