デジタル広告を始める企業が陥りがちな2つのパターン
次に松本氏は、マス広告とデジタル広告の役割の違いについて言及した。
「デジタル広告とは、企業からユーザーへメッセージを伝える際にPCまたはモバイルを用いるものです」と松本氏は定義。マス広告は、広いターゲットのユーザーに対して「認知」を獲得できる一方で、デジタル広告は、絞り込まれたターゲットのユーザーを「獲得」できるというように、それぞれ特徴と役割も違ってくる。
企業がデジタル広告に取り組み始める上での陥りがちなパターンが2つあるという。商材やターゲットにもよるが、「マス広告だけ行っていれば良いと考える“デジタルなし”」パターンと、「既存のマス広告の出稿をなくしてデジタル出稿1本化を行うという“極論”」パターンだ。
「なぜこの2パターンが良くないのか。それは、本来『マス広告』も『デジタル広告』も、全体を通じたマーケティング施策における1つの要素であり、それぞれの部分を相互に補完することで全体の最適化が実現できるからです。テレビCMだけ流しても、認知ばかりが先行し獲得にはつながらない。
逆にデジタル広告だけでは、認知が広がらず獲得が先細る。デジタル広告もマス広告も、適切な予算配分がマーケティング施策全体としての成果につながります」(松本氏)
運用上知っておくべきソーシャルメディア広告の特徴
デジタル広告の手法は、「検索連動型広告」「ディスプレイ広告」「ソーシャルメディア広告」の大きく3つに分けられ、それぞれ対象とするユーザーや広告の出し方などが異なる。中でも松本氏は、「ソーシャルメディア広告」に焦点を当て、この特徴について取り上げた。
まず1つ目の特徴は、「利用率の高さ」。下図の2012年からの代表的なSNSの利用推移を見ると、代表的なSNSをいずれか利用している人の割合が41.4%から71.2%へと上昇しており、SNSの利用率の高さがうかがえる。
2つ目の特徴は、「拡散性の高さ」。ユーザーが自発的に拡散を行うことによるバイラルが生まれやすい。LINE社の事例で、女子高生の中でどういうLINEの使い方がされているかを“LINEあるあるをまとめた動画コンテンツ”として作成し、SNSで投稿したところ、ユーザー間でのシェアや拡散が拡大し、結果として総視聴回数が200万回を超えたという。
このことから、「コンテンツの内容にもよるが、シェアや拡散により多くのユーザーの目に触れる機会を大幅に増やすことが可能なのもソーシャルメディアの特徴だ」と、松本氏は語る。
3つ目の特徴としては、利用する上での「炎上リスク」だ。企業がソーシャルメディアに投稿・広告を出す際は、法律に反する内容はもちろんのこと、マナー・モラルに欠けるような内容にならないよう十分に配慮することが、企業がソーシャルメディア広告を運用する上で重要なポイントとなる。
「見落としがちなこととしては、ソーシャルメディアは広くリーチを獲得できる一方で、何かミスがあるとカスタマーサポートへの対応が増加するということがあります。そうした点も事前にリスクヘッジが必要です。炎上のリスクについて注意しつつ、適切なアクションを行えば想定以上の広告効果を得ることが可能なのが、ソーシャルメディア広告といえるでしょう」(松本氏)