「ITは所詮道具」、求められるのは事業に貢献する提案
安成:田口さんはIT部門の守りの姿勢を解きほぐすために行っていることはありますか。
田口:当社の場合、デジタルマーケティングツールは内製で開発しているのですが、私がIT部門に常に言っていることは、「ITは所詮道具であって、メイン事業は不動産事業だ」ということです。その観点から、自分たちで何ができるかを提案するよう説いています。

通常、マーケティング部門がデジタルで何かやりたいという場合、IT部門が間に入ってSIerに依頼することが多いと思います。しかし、それだと意思疎通にワンクッション入ってしまうためスピード感が遅くなる上に、伝え方を間違えると意図したものと納品物との間にギャップが生じるケースもあります。そうなると、修正を行っている間に世の中のニーズは変わってしまいます。
そのため、事業部側が要求したことに対し、いかにプロトタイプを迅速に作れるかが重要になります。完璧に作らなくてもいいので、まずは手を動かしてプロトタイプを作れるエンジニアをIT部門の中に抱えることが、攻めのIT部門を作る第1歩です。
名刺に「マーケティング部門」とあるだけで意識が変わる
安成:では次に、理想的な組織体制についてお伺いいたします。先ほど話に少し出ましたが、コメ兵では、マーケティング部門の中にIT部門があるんですよね。

藤原:マーケティング統括部の中にIT事業部があります。担当しているのは、「EC/デジタルマーケティング」「宅配買取」に加え、社内の一般業務システムを開発するチームがあります。
それまでは、一般業務システムを担当する情報システムは管理本部に所属していたのですが、一括してマーケティング統括部の中に組み込んだことで、すべてのIT部門社員は名刺に「マーケティング統括部」と入ることになりました。
すると必然的に、IT部門のスタッフの中で「マーケティングスタッフの一人だ」という意識が生まれる、実際に名刺交換した先の取引先も、そういう風に扱うんです。
安成:しかしながら、「情報システム部門を下さい」という要求をどのように認めてもらったのですか。
藤原:2年ほど時間をかけて、組織改編に向けて経営層にデジタルの重要性を訴えてきました。2010年ごろからデジタルマーケティングの波が盛り上がってきたので、そのタイミングで融合しました。
田口:実際、名刺に自分の所属部門が「マーケティング」と書かれていると、非常に意識すると思うのでとても良い取り組みですね。ちなみに、IT部門に対して不満を覚える瞬間はありますか。
藤原:マーケティング側の要求はどんどん高くなっていくので、やはりスキルの問題はあります。当社の場合、全部内製でやっているわけではなく、大きなプロジェクトになるとITスタッフはプロジェクトマネージャーとして動くので、その中で開発のスピード感が遅いと、多少ストレスを感じることはあります。