話題の総量とメディアパブリシティを重視
商品の特性とユーザーの嗜好性を掛け合わせ、その期待を超えるプロモーションで売上に貢献したのが、日清食品の「カレーメシ」。4年前に発売した同商品は、昨年レンジ調理から湯かけ調理に変わって新登場し、この夏に「カップヌードルよりカレーメシ」と自社商品を押しのけて推奨するという振り切ったマーケティングを展開している。
同時に、人気のゲーム作品「アイマス(アイドルマスター シンデレラガールズ)」や、映画「パシフィックリム」のキャラクターデザイナーとタイアップして、二次創作を促すなどしてSNSでのユーザー投稿を後押しした。商品はお盆明けには品切れになり、今年の売上の着地は前年比1.5倍を見込んでいる。

「広告の一方で、それに頼りすぎず、企業発信のコミュニケーションにいちばん力を入れている。それを楽しんでもらってユーザー主導の情報発信が生まれ、双方を回りながら拡散していく構図を狙っている」(東氏)。
では、こうした施策の効果測定はどうしているのだろうか? 「前述のカレーメシのように、売りにつながれば結果よしとなるのだろうが、デジタルマーケティングの中間指標についてはどうか」という徳力氏の問いに、東氏は「総量を測っている」と答える。
1RTの意味を説明するのはとても難しい。「なので、主要6ブランドの名称が検索やツイートに書かれた数、YouTubeの再生回数、Yahoo!ニュースの登場回数などをすべて足したものを年間の話題の総量として、推移をみている」という。そこにはポジもネガも含まれるが、年々増えていることが見て取れる。「同時に、その先に『テレビ番組に取り上げられるか』という点を見据えている。最終的には商品を買ってもらいたい、好きになってもらいたいので、そこにつながる文脈づくりに注力している」と東氏。

ブームやツールではなく自社の方針を起点に
店舗で売上が見えやすい丸亀製麺でも、「デジタルの数値と来店客数の関係はどうかと問われる」と大洞氏は話す。各メニューの売上と、ハッシュタグ付きのSNSの投稿数を、ようやく関連づけて見られるようになったところだという。それでも、デジタル施策は何らかのプラスの効果があるのだろうと思いつつも、日々の売上が分かるからこそ、ブランドへの好意度といった話は「遠く感じられてしまう」という。
「ブランディング目的にというよりは、商品を気に入ってもらって来店を増やそうという、定量的な話に収束するのがポイントだと考えている」(大洞氏)。

効果測定指標として平尾氏は、購買あたりのコスト、CPPを挙げる。たとえばCoke ONアプリ内に設置したゲーム企画「Georgia Game Center」では、ジョージアに関する購買行動からセグメントして、メディアとクリエイティブを複数パターン掛け合わせ、最適な組み合わせを抽出。各組み合わせのCPPをみながらチューニングし、効果の最大化を図っている。アプリをダウンロードしても、すぐ消されることも多く、2週間ほど離れるともう戻らない傾向があるという。それを防止する施策にもなっているそうだ。

「デジタルマーケティングとブランディングの融合というテーマが大きいだけに、正解は企業ごとにまったく異なるが、ブームに乗ってデジマツールに走ってしまうと成功は遠のくのだろう。マスマーケティングの時代から当たり前にユーザーに向き合う中に、デジタルを組み込んでいくのが三社の共通点」と徳力氏。自社が大切にする信念や方針を見据えた上で試行錯誤することが、デジタルの力を長期的にブランディングに結びつける近道だといえそうだ。