理論的背景も重要—新テクノロジー対応を技術受容モデルで探る
次に先生方は先述した2つの特性、(1)の「モバイルペイメントが提供する機能の理解」と(2)の「消費者の個人的特性差」が、モバイルペイメントの利用意向にどのような影響を与えるかを証明するために「技術受容モデル」(Technology Acceptance Model : TAM)という理論を用いて解説を行っています。
この考え方は簡単に言うと新しい情報システム、テクノロジーを利用する人間の行動モデルを説明するもので、学術の世界では人が新技術を受け入れる要因を分析、理解する手法として広く利用されています。下にTAMの概念図を示しますね。

このモデルは、人が新しいテクノロジー技術を利用する要因として、
人が新しいテクノロジー技術を利用する要因
- 「知覚された有用性 (Perceived Usefulness)」=簡単に表現すると「それって使えるの?」、「便利なの?」的な要素があるかどうか
- 「知覚された利用容易性 (Perceived Ease of Use)」=簡単に説明すると「これって簡単に使えるの?」、「私にも使えるの?」
上記2つの要因がプラスに働けば、
が生じると説明します。
これからますますお客様は新しいテクノロジーを生活に取り込んでいくわけですから、技術受容モデル(TAM)の考え方をマーケターが理解することが重要になると思います。モバイルペイメントはもちろん、Amazon Echo、Google Homeも最初は「新しいテクノロジー」です。
これからの時代、お客様の目の前には、スマートフォンはもちろんのこと、IoTデバイス、もしかしたらロボットが買物、生活のサポートをするようになるかもしれません。そのような新しいテクノロジーをマーケターとして、企業人としてお客様に売り込んでいく仕事が出てくることでしょう。
お客様は新技術をどのように受け入れ、使い始めるのかを考える時に、難しい言葉ではありますが、「知覚された有用性」=「それって使えるの?」と、「知覚された利用容易性」=「これって簡単に使えるの?」を事前に調査し、「利用への態度」=「じゃあ使ってみよう!」になっているかを確認しておくとよいと思いますし、やはりお客様の特性を理解せずに新技術を売り込んでも上手くいくことはないでしょう。
で、モバイルペイメントはどうすれば普及するの?
最後に、この論文が技術受容モデルを使って提示しているモデルと、この論文が提示してくれる簡単な知見のまとめを示しておきます。

このモデルが何を示しているかはなかなか理解が難しいと思いますので、よくわからない場合は最初の図で理解してもらえば良いと思います。
この論文によるとアーリーアダプターは「知覚された利用容易性」=「これって簡単に使えるの?」を自身の「モバイル決済に関する知識」を駆使して判断しているようです。やはり「新しいもの好き」には、どんどんモバイルペイメントの良さを伝えてインフルエンサーになってもらうのが得策のようです。
また、レートアダプターは「知覚された有用性」=「それって使えるの?」要素を重視し、モバイルペイメントの機能のうち、2.の「Reachability=直訳すると到達可能性となるが、つまりいつでもどこでもアクセスできる機能」と4.の「Convenience=利便性」を重視しているようです。レートアダプターには、いかに使いやすいか、いつでも使える便利さを訴求したほうがよさそうですね。
以上で今回は終わりにしたいと思います。筆者の力不足で本当はこの論文にはもっと多くの知見があるのですが、そのあたりが知りたい方はぜひ!原文に挑戦してみてください。でも私が紹介したエッセンスを知るだけでも、実務家の方にも少しは役立つのではないかと思います。
「新しいものをどうやって流行らせるか?」そんな課題にぶちあたる時には技術受容モデルでお客様のリアクションを想像してみてくださいね。
今回紹介した論文は以下の通りです
Kim, C., Mirusmonov, M., & Lee, I. (2010). An empirical examination of factors influencing the intention to use mobile payment, Computers in Human Behavior, 26(3), pp.310-322.
Davis, F. D. (1989). Perceived Usefulness, Perceived Ease Of Use, and User Acceptance of Information Technology, MIS Quarterly,September, pp.319-340.
