「モバイルペイメントのみ」の実験店をオープンしたロイヤルホスト
そんな中、日本の小売サービス業でもモバイルペイメントに挑戦する企業が出てきました。2017年11月1日の朝日新聞デジタルに、福岡に拠点を持ち「ロイヤルホスト」を経営するロイヤルホールディングス(以下、ロイヤルHD)が、支払いを電子マネーやクレジットカードだけにした実験店を都内にオープンするという記事が出ました。
現金の管理を完全になくすことで、従業員の作業効率の向上、深刻化する人手不足に対応するのが狙いだといいます。開店するレストラン「GATHERING TABLE PANTRY(ギャザリングテーブルパントリー)」にはレジがありません。
注文はテーブルのタブレット端末から行い、代金も同じタブレット端末で、電子マネーやクレジットカードで行う。同記事によると、店舗運営の作業が減ることで、約40席の店を3人で運営できるとロイヤルHDはみているらしい。つまり、現金の取り扱いが小売業におけるオペレーション効率の低下を招いていると見ている企業も存在するのです。
先般アメリカ視察に行った際に、2007年にシリコンバレーで創業した紳士服専門店「BONOBOS(ボノボス)」で洋服を買ってみました。その購買体験には、まさに現金の受け渡しも、商品の受け渡しもなかった。
「BONOBOS」はオンライン店舗に軸足を置く業態なのですが、THE WALL STREET JOURNALによると2016年現在で全米に27ヵ所のリアル店舗を出店しており、さらに2020年までに100店舗に拡大する予定だといいます。
この店舗は、「ガイドショップ」と呼ばれ、顧客が気に入った商品をフィッティングするための店舗です。店自体は一般的なブランドショップとなんら変わりません。事前にオンラインで欲しい商品の目星をつけておき、店舗で商品をフィッティングします。サイズ感などを確かめて、その場で購入を決めたら、手ぶらで店を出るだけ。
店員は自分のタブレット端末でいわゆる「お客様のネット購買のサポート」をして、数日後には自宅や滞在先に、BONOBOSの倉庫からラッピングされた商品が届きます。その際の決済もすべてクレジットカードのみ。オンラインストアにカード情報を登録しておくことで、レジのない、そして紙袋のない購買体験を提供しているのです。
「なぜモバイルペイメントが普及するのか? しないのか?」、「どうすれば普及するのか?」、「会社でモバイルペイメントの導入を推進したいが、お客様には受け入れられるのか?」デジタルマーケティングにおいても重要な意味をもつ、決済方法の進化は実務家として目が離せない領域です。お客様の利用意向、競合企業の動き、そのあたりを含めてベストなモバイルペイメント戦略を構築したいですよね。
前置きが長くなりましたが、今回はそんなモバイルペイメントに関する研究のエッセンスをかいつまんでご説明し、実務で生かせるポイントを解説したいと思います。
