アドブロッカーより恐ろしいもの
2018年2月、米グーグルがChromeにアドブロック機能を搭載する方針を表明し、サイト運営各社は対応に追われた。
しかし、その意図は広告を駆除することではなく、Better Ads Standards(※1)に準拠していない広告を掲載するWebサイトをブロックすることで、オンライン広告の改善を目指しているのだ。たとえば、コンテンツを表示する前に掲出されるカウントダウン表示つきプレスティシャル広告や音が出るビデオを自動再生する広告などの不快な広告がターゲットとなる。
したがって、ガイドラインに従い、大量の広告メッセージを生活者に浴びせ続けることを止めれば、アドブロッカーは決して脅威ではない。広告主が本当に恐るべきはアドブロッカーではなく、むしろ、モラルのない配信によって損なわれるブランドと生活者との絆だ。

アメリカの名門ビジネススクールとして知られるウォートン・スクールで広告の未来を研究するJerry Wind博士とCatharine Hays博士(※2)が共著の『Beyond Advertising』で、「ブランドは生き残るために生活者とより多くの関係を築く必要がある」と主張している通り、広告の目的は生活者との会話である。
効率ばかり追求して、一方的に追いかけ回したり、結果的にウェブサーフィン体験を阻害したりすることがあれば、企業のマーケティング努力は水の泡となり、結果的に生活者を遠ざけてしまうということがアドブロッカーをめぐる議論の本質ではないだろうか。
(※1)Better Ads StandardsとはThe Coalition for Better Ads(以下CBA)という広告団体連合が制定したオンライン広告の基準
(※2)ウォートン・スクールの、広告の未来を研究する「フューチャー・オブ・アドバタイジング・プログラム(Wharton Future of Advertising Program)」ディレクター
