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イベントレポート

Advertising Week New York 2017でGoogleは何を語ったのか?

GoogleとUniliverが語る、これからのマーケティングに必要なこと(2、Marketing in the Age of Assistance)

 紹介する2つ目のセッションは、米Google PresidentのAllan Thygesen氏が、Unilever社 CMOのKeith Weed氏を招いて行われたトークセッションです。今回のAWNewYorkでは、GoogleとUnileverの取り組みをベースにしたKeith氏のプレゼンテーションやトークセッションが複数組まれており、長年にわたるパートナーシップによって築かれた両社の信頼関係が伺えました。その中で、本セッションでは、今後のマーケティングについて議論を交わされました。

Unileverが行っているマーケティングのフレームワーク「5つのC」

 セッションの冒頭、Google Allan氏から投げかけられた問いにUnileverのKeith氏は「モバイルの普及によって、人々のブランドとの関わり方は大きく変化した」と述べます。テレビ広告を見て店頭に買い物に行くという従来のモデルはシンプルであったが現在のカスタマージャーニーは信じられないほど複雑になり混沌としていることを指摘。そんな環境において、Unileverが行っているマーケティングの「5つのC」というフレームワークが紹介されました。

左がGoogleのAllan氏、右がUnileverのKeith氏

(1)CONSUMER
常にコンシューマーセントリックで考える。消費者を中心に理解していくことが最も重要。

(2)CONNECT
どのように消費者とつながっていくのか。USでは3分の1がモバイルからジャーニーが始まると言われている。また、音声端末でのボイスサーチなども視野にいれていく必要もある。

(3)CONTENT
消費者からみてつながる先にあるもの、それがコンテンツ。消費者は自分の価値に合うブランドとの関りには関心を持つが、そうでないブランドは拒否されていく。

(4)COMMUNITY
消費者がどのように買い物をし商品を利用するかを理解し、関わりを持つための新しい方法(チャネル)。

(5)COMMERCE
ブランド体験とショッピング体験は今や同一の物となっており、そのショッピング体験には摩擦(ストレス)があってはならない。ダイレクトなチャネルは消費者インサイトもダイレクトに得ることができる。

※解説は筆者の理解に基づく。

 Unileverは、このフレームを通してブランドリフトのマーケティングを行っているが、さらにKeith氏は「複雑化するカスタマージャーニーをシンプルにすることができるのがブランドの力だ」と指摘。いかにこの5C’s戦略によるブランド構築が「The Age Of Assistance」におけるマーケティングに重要であるかを語りました。

※前日にKeith氏が行った「Driving Growth in a Digital World」というプレゼンテーションの中では、この5C’sの取り組みとして、YouTubeチャンネル上でグローバルに展開された「All Things Hair」が紹介されました。GoogleがUnileverのマーケティング戦略に大きな役割を果たしていることが前提にあります。

UnileverとGoogleの長いパートナーシップの理由

 次にAllan氏の「両社の長い関係はどのように進化し、何か働いたのか?」という問いかけに対しKeith氏はGoogle Searchがマーケティングに果たした役割をあげ、もう一つの理由に”データ“によるインサイトがあったと語ります。先に紹介したYouTubeチャンネルでの「All Things Hair」の企画も、Google Searchのキーワードトレンドデータによるインサイトによって立ち上がったものだそうです。

デジタルの業界・仕組みにおいて重要な3つのポイント

 今度は逆に広告主であるKeith氏がデジタルマーケティングプラットフォーマーとしてのGoogleのAllan氏に対して「デジタル業界での重用なことは何だと思うか?」と問いかけ、まず「我々は、広告が人々にきちんと価値を伝えることによって広告主がそのビジネス価値を得ることができるような、広告を価値あるものにしたい」とした上で、広告主にとって有益な3つのポイントを挙げました。

(1)Viewability(視認性)
(2)Transparency(透明性)
(3)Trustworthy(信頼性)

 これに対しKeith氏はさらに「第3者による検証の必要性」を付け加え、「これは、広告主に対する大きな説明責任を果たしデジタル業界にさらなる飛躍をもたらす」とその重要性について論じました。

※このやり取りの背景には、今年イギリスで起きたYouTube広告がヘイトスピーチ動画に掲載され多くの広告主からの信頼を失った、という出来事があります。
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マーケティングプロセス全体で機能する「1つの計測システム」は実現可能か?

 Keith氏はさらに、マーケティングプロセス全体で機能するような計測システムの構築の可否について、Allan氏に問いかけました。

 Allan氏は「我々は、フルファネルとすべてのタッチポイントについて計測できるように努力している。Google アナリティクスではほとんどが可能になってきているが、まだ少し扱いにくい部分もある。外部のパートナーとの取り組みも進んでおりいくつかのプライバシーについての課題はあるが異なるソースからのマージが可能になるように進めている。消費者全体の価値連鎖(初回購入からLTVまで、のような)を計測できるようにしていきたい」と現在の取り組みを語りました。

※Googleはその後の今年11月にGoogle アナリティクス360とSalesforceとの戦略的パートナーシップを発表しました。上記のAllan氏のコメント“外部の”パートナー”とはSalesforce社とのパートナーシップについて言及したものと思われます。

今後、広告主やマーケターがすべきこと

 Keith氏は、「カスタマージャーニーの変化にフォーカスすべき。Unileverの5C’sのような独自のフレームによって複雑で混沌としたジャーニーに対しシンプルに取り組めるようにするべきだ。さらに、ブランド力がこれらの複雑さをシンプルにするためには非常に重要であり、その取り組みに重要なのが(メディアはエージェンシーとの)パートナーシップであり、(失敗を恐れない)実験であり、カスタマーセントリックな思考である」と語りました。

 Allan氏は、「まったく同感」とした上で「マーケターは、部分的で分断された視野ではなく広告主のビジネスへの貢献をもっと考えるべきだ」と付け加えました。すべてのチームでシンプルなKPIを共有し広めていくことの重要性が語られました

 最後にKeith氏は「マーケティングと広告の世界はまだまだ“怪しい”部分もあるが、一方ではとても楽しみも多いのも確かだ!」と意欲的な言葉でセッションを締めくくりました。

次のページ
GoogleとWalmartが描く、新たなコマースビジネス(3、The Future of Commerce)

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この記事の著者

山浦 直宏(アユダンテ)(ヤマウラ ナオヒロ(アユダンテ))

アユダンテ株式会社 データソリューション推進統括部 統括部長
チーフエグゼクティブコンサルタント
元立教大学経営学部兼任講師

読売広告社において、事業局、営業局、デジタルビジネス局を経て、ファーストリテイリング、トランスコスモスにて一貫してデジタルマーケティングに従事。2016年よりアユダンテに勤務。 ネット広告の黎明期より一貫して、ネット広告、デジタルマーケティング畑を歩む。アクセス解析には2003年より取組み、解析・コンサルティングの実績多数。2010年よりGoogle アナリティクス360を中心としたデジタルマーケティングコ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/12/26 09:00 https://markezine.jp/article/detail/27629

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