感度の高いブランドは動き始めている?企業発・音声アプリの可能性
――今後、企業発の音声アプリも増えてくると予想されます。どのような可能性があると思われますか。
國原:アプリ起動ワードに企業の名前やブランド名を入れると、ユーザー認知や親和性が高まるかもしれません。また企業が持っている既存のDMPをスマートスピーカーに対応させ将来的には音声アプリも含めた行動データをもとに、ユーザーごとに最適化されたサービスを提供するなどがイメージできます。Alexa はOAuth(オース)という技術を使ったAccount Linkingというユーザー認証が利用できますので、外部サービスとスマートスピーカーのアカウントをつなげるといったことは可能です。

伊東:その上でペルソナの設定には、2つポイントがあります。まずは企業のブランドが持つペルソナと消費者がコミュニケーションする音声アプリのペルソナが一致していること。そして、アプリの役割に応じてキャラクターの人間性も変えていくことを設計に盛り込まなくてはなりません。
エンターテインメントやコミュニケーションを楽しむものであれば、カジュアルなキャラクター性が大切。しかし対話を通じてユーザーの課題解決をする目的達成型のアプリの場合は、ロジックや知的さを押し出す必要がありますね。
國原:とはいえ、今のタイミングで音声アプリに興味を持たれている企業は、すぐにビジネスへつなげるというよりも、長い目で見てチャレンジしていこうという姿勢が強いと思います。初期は軽い企画でユーザーのタッチポイントを増やしましょうという形で取り組み、音声検索などのVUI利用者数増加時代を見越し、今から先手を打って数年越しのビジョンを描いていらっしゃるようです。
人がシステムに合わせるのではなく、システムが人に合わせる
――今後の音声アプリの展開について、どのようにお考えですか。
伊東:今はスマートスピーカーに対して、ユーザーがお願いをするというコミュニケーションですが、将来的にはAI側から先回りして答えてくれる・考えてくれるというものになっていくと思います。
「8時に起こして」の頼むのではなく、ユーザーが朝何時に起きるかをAIが学習し起こしてくれたり、「電気を消して」と頼まなくても人が不在のときは電気を消したりと、日常にある小さなお願い、やっておいてほしいことに対応していくようになるでしょう。するとスマートスピーカーや音声アプリは特別なものではなく、日常的によく使われるサービスになりますね。
GUIはインターフェイスに人が行動を合わせるものでしたが、VUIは会話という人のコミュニケーションへインターフェイス側が合わせていくものです。この大きな変化を念頭に、ユーザーの利用ケースに沿ったアプリを作っていくことが重要だと思います。
國原:PF側のAI機能がもっと成熟すれば、できることも増えます。すると私たちサードパーティは、利便性を追求するためのVUIか、VUIだからこそできるゲームを作るのか、VUIの持つ可能性を定めて開発をするフェーズへ移ることができます。また、VUIのみならずPF側からマルチモーダルな情報提供の機構が整備されてくるはずなので、それらを駆使して、もっと生活が便利になるサービスを作りたいですね。
――今まさに、スマートスピーカーを通して新しいテクノロジーが生活の中へ浸透していく最中であり、ユーザーとしても企業としても興味深い展開が期待できると感じました。ありがとうございました。