位置情報とアプリがもたらした恩恵は?
MZ:今回のデータ、木村さんはどのように受け止めていますか。
木村:位置情報だけでは、ユーザー像は正確に描けません。ただ、各商業施設のターゲットと組み合わせると真実が見えてくるのかなと思います。実際にこの大型商業施設はこれらの情報や客層から、ほぼ競合しないこともわかりました。

MZ:今回抱えていた課題は解決したということですね。アプリを導入したことで、恩恵を受けた部分はありますか。
木村:会員になってもらうハードルが大幅に下がりました。クレジットカードは会員になるには、書面の記入から審査があり、それからやっとカードが届く。一方でアプリはダウンロードいただければ簡単に登録できる。
実際、始めて1年経たないうちに、当時のカード会員数を上回る勢いでアプリの会員登録数が増えています。我々の商圏はそこまで広くないこともデータからわかっています。商圏が狭い、つまりリピート来店しやすい距離にお客様が多いので、アプリとの相性もピッタリでした。
MZ:テナントさんからの反応はいかがですか。
木村:最近、「デジタルポイントカードの利用が増えてきた」と言われるようになりました。入館者数も着実に増え、売上も上がり、ポイントが溜まったので、使う人も増えてきた。一定の効果が出てきたんだと感じています。
ポイントカード×位置情報で見える顧客像
MZ:このほかに、現在進めている取り組みはありますか。
熊沢:現在、店舗内にBeaconを設置していて、各会員様の店舗内における動きを把握しています。これとポイントカードで得られる購買データを組み合わせ、よりお客様に最適なサービスを提供することを目指しています。

位置情報が購買に関わるデータと合わさると、来店と購買を紐づけた購買率が可視化できます。たとえば、夜は基本的に来店数が少なくなりますが、購買する方は多いので購買率が44%あります。このデータから、夜来る方は、特に購買意欲がある方なので必ず接客して、落とさないようにしようといったことが考えられます。
また、年齢・性別でもデータが見えます。マロニエゲートさんの場合、10代の方の来店は13.8%ですが、購買は18.2%。10代の購買率が高いので、もう少しこの世代を呼び込めたら、売上増にもつながると思います。
木村:おもしろいデータなので、今後の販促に活かしたいですね。ここまで早く会員が集まると思っていなかったので、これから幅広い活用につなげられたらいいと思っています。
お客様のメリットありきで動く
MZ:最後に今後の展望を教えてください。
熊沢:今後の活用には2つ道があると思っています。1つは分析です。銀座の現状とお店の来店、購買がどうなっているかをさらに分析していきたいですね。
もう1つは、アプリ上での販促活動です。先ほど木村社長がおっしゃった通り、銀座に来たこともわかれば、来店したタイミングもわかり、どういった属性の方かもわかる。その情報をもとに、お客様が求めている情報をきちんとOne to Oneで提供できないかと考えています。
酒田:今後は将来予測できたらと考えています。行動パターンというのは皆さんが思っているよりも単純です。そのパターンを予測して、セール情報を送ってあげるといった、熊沢さんもおっしゃっているOne to Oneでの施策ができると思います。また、位置情報の領域でそこまでできているプレーヤーはいないので、ぜひ実現したいと思います。
木村:勘違いしてはいけないのが、データが取れるというのはお客様の側のメリットではないということです。むしろマイナスに受け取られかねない。そうならないためには、様々な魅力を付加する必要があります。
現状では、ポイントがもらえる、使えるというメリットしか提供できていないと思いますし、これは何十年も前から世の中の人がやっていて、たとえば紙のスタンプカードなどデジタルでなくてもできてしまう。だからこそ、今後はデジタルならではの体験を考え、アプリ自体を開くのが楽しい、お店に行ってアプリを使いたいと思わせる仕掛けが必要だと思います。それをリクルートライフスタイルやブログウォッチャーの方と考えていきたいです。