会議が終わるころには実装完了

村上:生産性に関連すると、スピード感も、すごいものがありましたね。会議でもその場で議事録が作られているから、会議終了時点で議事録が送られてくるし。
有園:あれは、驚きましたね。私がGoogleに来る前に在籍していたオーバーチュアも同じカリフォルニアの会社でしたが、それでも最初はスピード感に本当に面食らって。なんだこれ、みたいな。
村上:Google AdWordsのセールスプロダクト会議なら、今どういうことが進行しているかのリストがだーっと100個くらい並んでいて、その進捗をどんどん確認していく。事前にシェアされるドキュメントを読み込んでいないと、わからなかったでしょ?
有園:ちょ、ちょっと待って待って! と思ってました(笑)。
村上:会議に参加していないエンジニアも、議事録がどんどんGoogleドキュメントで共有されるのを見ていて、変更が決まったものの中の幾つかは、会議が終わるころにはもう実装されていたりして。エンジニアの皆さんは物書きではあるけど、コーディングスタイルはかなり厳密に決まっていたから、改変は速いんですよね。
有園:そのインパクトは大きかったです。それに比べると、日系企業はゆっくりしている……それだけ余裕があるってことなのかもしれないですが。
村上:会議の場は「決める場だ」という認識が皆にあったからね。議事録ができたというのは、こう決めましたという話だから、それならどんどん実行していかないと忙しい中で集まった意味がない。
自分で目標を申告する「OKR」の仕組み
村上:さっき“究極のブラック企業”なんていいましたけど、上から決められた目標やノルマを追うのではなく、自分で目標を決めて、守る。裏を返せば言い訳ができない、ノンエクスキューズとも言えます。ひとつキーワードがあって、ボトムライン・オリエンテッドなんですよね。結果を出さないといけない。
有園:評価制度も明確でしたね。今おっしゃった「目標」を、僕らはOKR(Objective and Key Result)として四半期ごとに数字で書かないといけない。実はFacebookやメルカリもOKRを導入しているらしい。やっぱり、きちんと自分で目標設定して自己管理する習慣がつくのは大事なんじゃないかと思いますね。
村上:大事だね。経理やシステム管理者といった数値化しにくい業務も必ず数字で表すことになっていて、だからどの職種も客観評価ができた。営業だと典型ですが、絶対に達成できないようなノルマを背負わせるのはだめだよね。
少しストレッチするくらいはいいけど、自主的に書く。ただ、もちろんGoogleでも楽勝の目標は書けないわけで、そこは皆さんと議論しながら、業界や競合の伸びからするとこのくらいしないと負けるよね、といった現実的なラインで決めていました。
有園:有名な20%ルール(※)も、OKRの中に何をやるかを書くことになっていましたね。
村上:そうですね。ただ、これ皆さん「仕事時間のうち20%」といわれるんですが、時間で管理していないので、時間じゃないんですよ。あくまで、自分のエネルギーや能力の2割を、という意味ですね。これは、こんなにドッグイヤーの業界で何か常に新しいヒントや視点を得るのに、極めて重要だと思います。
※仕事のうち20%は、本業から離れて自分の興味のある分野を探求してよい/探求すべき、というGoogle独自の制度