消費者がアドバイザーになり、アンバサダーになる
小代:私がマーケティングの世界に入った10年前はマスが全盛で、その傍でデジタルを並行しようという動きでした。今はデジタルやSNSが出てきて、見込み顧客が見えやすくなり、そうした見込み顧客に既存顧客の方が感動体験を伝えることが一般化しています。そのため企業も、そうした顧客の中に直接出向かないと、商品を広められないのです。そうした課題に対し、今回は商品開発のフェーズから顧客を巻き込んできました。
坂田:私もそこは意識して、単に商品開発だけでなく、商品が開発されるまでのプロセスそれ自体がプロモーションとして機能することも考えて設計しましたし、実際に今、そうなっています。今後は商品開発の後は参加者の中から「地元チップス大使」を任命し、ソーシャルマーケティングや地元での普及活動まで広げていく仕組みも考えています。
地元チップスの話を伺った当初は「ものづくりの民主化だ」と思っていたのですが、今後の展開を考えると、プロモーションを含めた「マーケティング自体の民主化」という現象が起こり始めているのかもしれません。
通常のプロモーションは、発売後に行うものですが、地元チップスの場合は発売する1年前から、潜在顧客やライトユーザーが心待ちにしています。そうした新しいファンが、商品発売時にはSNSで「買ったよ! 食べたよ!」と発信してくれる可能性がありますし、それが新たなファン育成につながる可能性もあります。
この商品開発そのものが、ファン育成であり、プロモーションであり、新規商市場の創出という、一石三鳥の効果があります。消費者は「購入」という役割を担うだけではないのです。企画者であり、告知者であり、アドバイザーにもなる。これが共創のおもしろいところです。

共創という取り組みだからこそ、消費者に商品を喚起できる
小代:共創というコンセプトで新商品を開発するに当たり、多くの方に真剣に「ポテトチップス」について考えてもらえるようになったのは大きいです。ポテトチップスは、誰もが一度は食べたことがある商品ですが、ある程度の年齢以上になると、手に取ってくれるファーストチョイスにはならないのです。
その現状を変えるため、普通の生活者の方とつながり、商品作りに参加してもらうことで、期待値を上げ、また「今回の応募に当たり、久しぶりにポテトチップスを食べた」といった効果を生み出しました。普段ポテトチップスに接していない方からも反応をいただき、良い方向に向かっていることを実感しています。
坂田:今後、当社としては、今回のプロジェクトの途中経過について、出せる範囲で発信していこうと思っています。集まった様々な味の実際を確かめたり、協議したりと、いろいろ楽しんでやっています、楽しみにしていてください、と。
小代:そうですね、当社も、ポテトチップスはどのように作られているのかということを発信し、それがポテトチップスに対する喚起を生み出せると期待しています。そして地元チップスを起点に、うすしお味やのりしお、コンソメパンチといった通常商品の喚起にまでつなげていきたいと考えています。