体験価値を軸に発想する思考のリフレームを
2017年を振り返って
IoTやAIといった技術が打ち合わせの場で当たり前に話されるようになりました。デジタルがマーケティングだけでなく、製品やサービスの価値を高めるための中核として必要不可欠なものとなり、同時に私たちのアイデアの幅や柔軟性も変化を必要とするシーンが多くなってきています。たとえば、ユーザーの行動データを利用して、未充足ニーズを満たす新たなサービスを開発したり、AIスピーカーを利用し、ユーザーの日常とブランドの新たな接点構築を試みたりなどです。議論されるブランド課題も、数年前とは質が異なっていることを特に実感する一年でした。
2018年へ向けて
デジタル技術の進歩をユーザーの体験価値へと結びつける具体策を提供していきたいと考えています。そのためには、デジタルをコミュニケーション施策の延長として捉えるのではなく、製品やサービスそのものの価値を高めるための軸として発想する思考のリフレームが必要と感じています。「モノからコトへ」という単純なことではなく、「提供したいコト(体験)に合わせたモノの変化をいかに生み出せるか」ということが真の挑戦です。当社でもいくつかのプロジェクトが進行しておりますが、具体的にそれらを世に提供し、お客様の日常に新たな価値を届けることができればと考えています。

ライオン株式会社コミュニケーションデザイン部
CXプランニング室マネージャー 志水 弘樹氏
外資系広告会社、輸入車ブランドの日本法人マーケティング担当を経て、2017年9月よりライオンに所属。早稲田大学大学院商学研究科専門職学位(MBA)課程修了。
さらなる躍進への五つのステップ
2017年を振り返って
大きく二つのことが印象的だった。一つ目は、GRPだけでなく、視聴質や各種デジタル計測と組み合わせたテレビCMの効果測定が進化したこと。これにより、バイイングやオンライン/オフライン予算配分の最適化メソッドが確立されつつある。二つ目は、先進企業がクリエイティブ要素についてさらなる多角的な分析を進めていることだ。テレビCMひいてはプロダクトそのものでの大胆なブランドコラボレーションなど、デジタルPRによるインパクトまで含めたプランニングによって大きな成果をあげている。
2018年へ向けて
五つのことを実践したい。まず、“寄り添い”をデジタルコミュニケーションにより強化し、メソッドをさらに進化させ顧客満足度を向上させる。二つ目、異業種との大胆なコラボレーションや共創型のプロダクト開発を通じ、世の中に話題を提供し続ける。三つ目、「RIZAPが実現する“健康”」の価値を認知してもらうために、2018年1月より長野県伊那市で開始する日本初の自治体向け成果報酬型健康増進プログラムや企業向けサービスを強化し、大学等と連携しその効果を科学的に証明していく。四つ目、RIZAPグループ全体でのシナジーを発揮できるようなマーケティングプラットフォーム構築に取り掛かる。そして五つ目、グローバル展開を加速させる。

RIZAPグループ株式会社
グループマーケティング推進室 室長 松岡 洋平氏
京都大学教育学部卒(心理学)。アーサー・D・リトルを経てライフネット生命立ち上げに参画、マーケティング部長としてブランディング等を所管。米ブランド「ディッキーズ」日本法人立ち上げ、副社長として営業・マーケティング・ライセンシング等を統括した後、スマートニュースにてマーケティングディレクターとしてテレビCMやSmartNewsCreative HUB立ち上げ。2017年RIZAPグループ入社。
重視するのは何よりもユーザーベネフィット
2017年を振り返って
2017年は、マーケティングとは自社ブランドを生活者に押し付けるものではなく、あらゆるステイクホルダーに対する「サービス」へ移行すべき時代であることを実感する年でした。AppleのCookieポリシー変更とITPの導入に見られるように、デジタル環境はますますユーザーが主導する時代となるでしょう。そんな中、手前味噌ながらLINEビジネスコネクトを使ったダイナースクラブの「ごひいき予約」は、「サービス」としてのマーケティングとして白眉でした。「マーケティングは人々をインスパイアし、世の中の役に立たない限りは公害に過ぎない」とはAKQAのアジャズ・アーメッドの言葉ですが、今こそ我々はこの言葉を胸に刻むべきと痛感します。
2018年へ向けて
LINE Ads Platformが順調に成長を続け、またLINE ビジネスコネクト等でもユニークな取り組みが数多く生まれるなど、広告事業はLINEの収益最大の柱に成長しました。しかし、それに満足することなく、2018年はLINEの広告事業にとって第二創業とも言える大きな変革の年と位置付け、果敢に進化していきます。重視するのは何よりもユーザーベネフィット。あくまでユーザーセントリックに、すべての広告プロダクトをアウェアネスからリテンションに至るまで一気通貫して設計・構築することで、国内最大規模のユーザーベースを有するマーケティングプラットフォームとして、多くのマーケターに支持される存在になりたいと考えています。

LINE 株式会社執行役員 広告事業戦略担当 葉村 真樹氏
Google日本法人にて経営企画室兼営業戦略企画部統括部長、ソフトバンクにてiPhone事業推進室長、Twitter日本法人にて広告事業統括およびブランド戦略部門日本および東アジア統括を歴任。AKQA日本法人代表、PwCコンサルティングエクスペリエンスセンター長等を経て、2017年LINE 執行役員に就任。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、博士(学術)。
デザイン・組織・プロセスの三方向から改革に取り組む
2017年を振り返って
AIの進化、フェイクニュース問題が特に印象に残りました。AI技術の進化により、時間・場所・コンテンツ軸等多面的な角度から、個々のユーザー体験をより向上させることが可能になりました。また、AlexaやGoogle Assistantなどの人工知能音声認識技術が新たな局面を開こうとしています。フェイクニュースは、昨年から折々で報じられているとおりですが、日本だけではなく世界的な問題です。信頼できる情報を持てる者・持たざる者の間で情報格差が生まれており、健全な情報接触の環境育成・維持に大きな影響を与えています。どちらの動向においても、「ユーザーに何をどう伝え・どう届けるのか」を深く考える一年となりました。
2018年へ向けて
Logitech(日本ではロジクール)には複数の製品ライン・ブランドがあり、コーポレートサイトとしては現在、46の国・地域に向けて情報を発信しています。どの言語・地域用サイトにおいても、より効率よく、正しい情報を適したタイミング、適した手段で提供できるよう、デザイン・組織・プロセスの三方向から改革に取り組んでいます。可能な限りシステム化を進めることで、生まれた時間や余力を、社内外チームとの対話や、新しいサービス・機能の開発に費やすことが狙いです。2018年はより能動的な対応が求められる年になるでしょう。だからこそ、トレーニングもメンバー各々に沿う内容を用意し、組織力も強化していきたいと考えています。

株式会社ロジクール Sr.Manager, Digital Operations 秋吉 梨枝氏
高校時代から独学でコーディングを学び、大学卒業後ネット関係の企業でEC事業に従事。Webサイトのディレクションの他、マーケティングや情報管理など幅広い業務に携わる。その後渡米、ベンチャー企業でBtoBマーケティングを担当。帰国後、ロジクールに入社しコーポレートサイトの日本エリアを統括。APAC、全世界へと管轄する範囲を広げ、現在はグローバル責任者を務める。