ブランドと生活者の接点を構築する「レッドブル・エアレース」
「翼をさずける」というタグラインを掲げ、レッドブルが取り組み続けているのが、ブランドと生活者との接点を構築するためのエキサイティングなスポーツイベントの開催です。
これらのスポーツイベントを行う目的は、商品そのものに対する訴求ではなく生活者に「ブランド体験を提供する」こと。過酷なレースで見せる選手たちの高いパフォーマンスに感動することやそれを共有すること自体が、ブランドと生活者をつなぐコアとなっているのです。
「レッドブル・エアレース」は、レッドブルの「翼をさずける」というブランド体験を提供するイベントとして2003年から開催されています。2017年6月、その「レッドブル・エアレース」が千葉県の幕張で開催されました。国内のコアな飛行機ファンによる熱烈なエンゲージメントが拡大したことに加え、今年は日本人がワールドチャンピオンに輝くなど、ニュースとして取り上げられる機会が多かったこともエンゲージメント数を押し上げる要因となりました。
「賛否の応酬」がシェア拡散を加速させる
今回、エンゲージメント数が年間トップとなった最大の要因は、レースそのものではなくスペシャル・サイドアクトでの話題でした。エアレース期間中、東京湾の上空を70年ぶりに零戦が飛行したのです。
この零戦はパプアニューギニアで発見された残骸から復元されたもので、世界に現存する4機のうち飛行可能な一機だそうです。戦時中からずっと眠っていた機体が、文字通り“翼をさずかり”飛行する姿が感動を呼んでソーシャルメディア上で大きく話題となりました。
一方で、一部の政党やメディアからは、戦闘機である零戦が過去の軍国主義を想起させるという批判が巻き起こりました。通常、日本においてこうした批判が上がる際は、意見が一辺倒に偏って一気に“炎上”することが多いように思います。
しかし、今回特筆すべきなのは、「一部の批判」に対して「さらなる反論」が相次ぎ、賛否両論を生んで話題が雪だるま式に拡大していったことです。決定的だったのは、開催地である千葉市の熊谷俊人市長が、零戦と戦争を結びつける批判に対してTwitter上で反論したことでした。
つまり今回の一件は、もはやブランド活動の域を越えて、零戦をめぐるイデオロギー論争にまで発展していったのです。このように賛否両論入り混じった議論が起こるのがソーシャルメディアという“場”であり、話題が一気にエンゲージメントしていきました。