広告主にとってのブランドセーフティとは
広告主側からプログラマティックによって取引される広告インベントリを見た場合、前述のとおり、多種多様なアドネットワーク、エクスチェンジ、SSPを介して広告インベントリが供給されています。それらの在庫に対して、DSPが備えるターゲティング機能を使い、商品やサービスにより適すると思われるオーディエンスに効率よくリーチできるというのが、広告主がプログラマティック取引を採用することで享受できる大きなメリットの一つです。

その一方で、どういったサイトやコンテンツに広告が掲載されるかを事前に判断することができないという意味で、ブランドセーフティに対するリスクがデメリットの一つといえます。それが広告主にとってのブランドセーフティというテーマになります。
動画共有サービスを舞台に発生した、不適切な動画に対して大手広告主の広告が表示されてしまった問題に関して、多数の広告主がブランドセーフティに関するリスクを考え、そのサービスに対する広告予算投下を停止する、というニュースが記憶に新しい方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
純広告取引やアドネットワークといった広告商品であれば、配信面がどういったもので構成されているのか事前に把握できます。そのため、事前にブランド毀損リスクのある配信面の購入をしない、もしくはブラックリストのような機能を使って特定の面について配信を止める、といった対策を取ることができます。
また、もし結果としてある程度残存リスクがあったとしても、それが広告主にとって受容可能なレベルであるかどうかという判断も、比較的容易なケースが多いのではないかと思います。
プログラマティック取引が抱える課題
しかしながら、プログラマティック取引の場合、どのサイトの、どういったコンテンツに、どのような形で広告が掲載されるのか、事前に把握することが難しいのが実情です。その中でいかにブランドセーフティを担保しつつ、効率の良い広告配信を実現していくのか、というのがまさに重要なテーマになっています。
現在、こうした非常に複雑な流通経路で広告インプレッションが取引されることに対し、その透明性、健全性を高める目的で、Ads.txt、Trustworthy Accountability Groupなど様々な取り組みが業界中で進んでいます。
今回はそれらを詳しくは取り上げませんが、こうした活動を通して、リスクの高い広告インプレッションや、そうしたインプレッションを取り扱っている事業者が広告取引市場から排除されていく、といった効果はあるでしょう。そのため、間接的ではあるものの、ブランドセーフティリスク軽減に対して、一定程度寄与していくのではないかと思います。ですが、それらはすべてを解決してくれるわけではありません。