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第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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カスタマージャーニー研究プロジェクト(AD)

お客様の人生に寄り添い食の豊かさを提案したい、すかいらーくが目指す顧客との関係

クーポンが使われない場合はどうする?

 複数あるクーポンシナリオのうち、反応率が群を抜いて良いシナリオが2つあるという。1つは、クーポンを使った後に送るサンキューシナリオで、もう1つはウェルカムシナリオだ。

 この2つのシナリオの反応が良い原因を、ユーザーの行動をトリガーにしているためだと上遠野氏は考える。ユーザー自身がすかいらーくグループの店舗に興味を持ったタイミングでアプローチするため、クーポンの利用や来店などにつながりやすいわけだ。

 また、登録している子どもの誕生日に合わせて送るバースデークーポンは、ファミリー層の来店に大きく貢献しているという。子ども向け商品のクーポンでも、結局は大人もメニューを頼むことになるので、ROIが極めて良い。これに対し、定期通知のシナリオはやや反応が落ちる。ヘビーユーザーや興味のあるユーザーだけでなく、休眠ユーザーにも送っているからだと考えられる。

 そこで同社では、今後こうしたクーポンに反応しない層に対しては、濱嶋氏が進めているオウンドメディアのコンテンツでアプローチしていくことも視野に入れている。

 「お客様の行動は様々ですが、たとえばアプリにオウンドメディアコンテンツを配信し、その閲覧履歴を分析して、レコメンド内容を考えていくという方法もあります。また、店舗検索をした人に対し、近くにあるすかいらーくブランドの店舗を提案するというやり方もあります。このように、クーポンを利用されない場合のシナリオも策定していきたいと考えています」(濱嶋氏)

PCサイト
上:PCサイト、左:スマホサイト、右:アプリ。コンテンツを活用し、様々な接点でコミュニケーションを可能に
上:PCサイト、左:スマホサイト、右:アプリ。コンテンツを活用し、様々な接点でコミュニケーションを可能に

 ゆくゆくは、オウンドメディアの来訪者やアプリユーザー、メールマガジンの登録者などを単一IDで把握し、クーポンの利用からコンテンツの閲覧まで、様々な行動を統合管理していきたいと、両氏は展望を語る。

 こうした将来を見据えて開発を進めているのが、ブランド横断型の「すかいらーくアプリ」だ。上遠野氏は、マーケティングオートメーションチームのリーダーとして、Marketing Cloudとアプリの機能を連携する開発プロジェクトのオーナーとして開発を指揮しているという。

人生に寄り添って、食の豊かさを提案したい

 現在同社が注力しているのは、「顧客の最適なタイミングで適切なオファーを提示すること」だが、最終的に目指しているのは、ユーザーのライフステージを踏まえて、最適な提案をしていくことだという。

 たとえば、自分が子どもの時に家族で行ったファミリーレストランは、その後成長していくに従い、友人と一緒に楽しむ場所に変わっていく。そして結婚して子どもができ、“昔自分が通ったあのファミリーレストランに、自分の子どもを連れていく”という未来が訪れるかもしれない。

 「お客様の人生のストーリーに基づいて『家族や友人と一緒に食事する豊かさ』を実感できるようなコミュニケーションを実現したいですね」(上遠野氏)

 ユーザーの人生に寄り添い、「食べること」の楽しさや豊かさを提案することで、すかいらーくブランドの価値そのものも向上していく。また、「すかいらーくの強みは、店舗での実体験を通じて価値を訴求できること」と濱嶋氏。

 「デジタルはツールとして接客に利用しますが、何でもできるわけではありません。あくまで店舗の実体験を補足するのがデジタルツールの役割なので、そこで行き過ぎないように、お客様に寄り添う姿勢が大事だと思います」(濱嶋氏)

 店舗での「いい体験」が、「次もここに来よう」というモチベーションにつながる。それを促す提案を、Marketing Cloudで組み立てる。それが、すかいらーくグループの目指す良い顧客体験作りなのだ。

カスタマージャーニー研究プロジェクトチームのコメント

加藤:ファミリーレストランは、顧客に選ばれるための大前提としてのカスタマージャーニーがとても複雑です。今回のインタビューから学べることは、様々なデータで顧客を理解したうえでコンテンツの中身=接客感を磨いていくことが、いかに重要かということです。デジタルテクノロジーを介した「店舗接客の延長」が、顧客体験を広げている好例と言えるでしょう。

押久保:「店舗の実体験を補足するのがデジタルツールの役割」。魔法の杖として捉えられがちなデジタルツールですが、このように何を実現したいのか、役割は何なのかを的確に理解することがまず重要だと感じます。クーポンに反応しない層への対応などは「お客様に寄り添う」という姿勢が徹底しているからこそ生まれる視点と言えるでしょう。

カスタマージャーニー研究プロジェクトとは?
「カスタマージャーニー」、顧客の一連のブランド体験を旅に例えた言葉。デジタルやリアルの接点が交差し、顧客の行動が複雑化する中、「真の顧客視点」に立って、マーケティングを実践する重要性が増してきました。
カスタマージャーニーに基づいたマーケティングの必要性は、その認知が進む一方で、「きちんと“顧客視点に基づいたシナリオ”を作成し、運用できている企業はまだまだ少ない」多くのマーケターに意見を聞くと、そのように認識されています。
今回、押久保率いるMarkeZine編集部とセールスフォース・ドットコム マーケティングディレクターとして、各企業とジャーニーを研究してきた加藤希尊氏を中心に、共同でカスタマージャーニー研究プロジェクトを立ち上げました。本プロジェクトでは、「顧客視点のマーケティング」における成功例を取り上げ、様々なアプローチ方法をご紹介していきます。その他の成功例はこちら

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この記事の著者

加藤 希尊(カトウ ミコト)

チーターデジタル株式会社 副社長 兼 CMO
広告代理店と広告主、BtoCとBtoB両方の経験を持つプロフェッショナルマーケター。WPPグループに12年勤務し、化粧品やITなど、14業種において100以上のマーケティング施策を展開。2012年よりセールスフォース・ドットコムに参画し、日本におけるマーケティングオートメ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/04/16 14:14 https://markezine.jp/article/detail/27862

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