組織体制はコストカットを狙うのか、成長投資を狙うのか
P&Gの現行の組織体制は、グローバル企業の「教科書」とも言える極めて「一般的」な構造だ(図表1)。

「ブランドを担当するユニット(GBU)」が中心となり、その周りを横断的な「セールス・マーケティング・ユニット(SMO)」が支援する。ブランドGBU自体は戦略特色によって10カテゴリーに区分けされており、それぞれにマーケティング活動(費用)が横断組織SMOの判断で「漏れなくダブりなく」配分できることを意図した組織だ。
気になるのが「グローバル・ビジネス・サービス(GBS)」の報告ラインだ。このユニットはIT、ファイナンス、施設設備投資、購買、人的配置を担当しつつ、現行ビジネスの効率化を提供する。ITを使ったビジネスのスケール化およびシステム化をグローバルで提供し、新規ビジネスの立ち上げも担っている。
このユニットの活動は、ブランド部門にP/Lを押し付けることなく、直接経営層に報告ラインがつながる。トライアンの提案は、このユニットこそがブランドを牽引する役目があり、そのコスト報告はブランド管理をするGBUに集約させてP/Lの責任を持つべきだとする。特にスタートアップの「Small, Mid-sized & Local」ブランドならば、なおさらだろう。実はSMOすらもGBUへの集約ではなく、経営層とつながる「並列」ラインを持つ構造だ。トライアンが提案する「一点突破」への組織変更はいずれ日本にもじわりと浸透するはずだ。
またトライアンは、デジタル広告を含めて知見を持つ外部の「ベスト・アスリート」が少なすぎることも指摘。まずは執行役員レベルで100人中、最低でも25人がP&Gの外部歴が長いプロを招聘すべきだとガイドラインを示した。トライアンのレポートでは現状のP&Gを例に数えるとトップ33人のうち、外部歴の長いプロはたった3人である。
渦中のペルツ氏は75歳の年長だが、現在でもハンバーガーのWendy’sのNon-executive Chairmanをはじめ、2つの上場企業の役員を務め、GEの再建中でも有名だ。これまでにもPepsiCo、Heinz、Mondelēz、Kraft、Cadbury等の経営を立て直し、特にCPG企業と新興テクノロジー企業への投資には明るい。「P&G生え抜き」とは違う現場情報を吸収しているペルツ氏の目線の数々は、日本企業にも大いに当てはまる。未来のヒントが満載のレポートには見やすい図が多いので、原文の参照をお勧めする。
本コラムはデジタルインテリジェンス発行の『DI. MAD MAN Report』の一部を再編集して掲載しています。本編ご購読希望の方は、こちらをご覧ください。