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MarkeZine Day 2018 Spring

花王とインテージが本音で激論、広告効果検証の現状と課題

花王で取り組んだ分析の例

廣澤:塩見さんには調査の種類について解説してもらいましたが、花王の取り組みについては、「合意形成」のための効果測定がどれだけできるのかという問いに答える形で紹介したいと思います。

 まず、大型分析の取り組みとしては、ゴールである売り上げにどんな施策が効果的かを構造化した「Structural Equation Modeling(SEM)」の例があります。店頭が強いとは言え、たとえば、私が担当している乾燥性敏感肌を考えた「キュレル」に関しては、ユーザーが事前にどれだけ調べたかの「Zero Moment of Truth」も大事です。検索が効果的と推測していたものの、全体観を理解したいと思い、アタラさんに手伝ってもらいました。今まで感覚的に捉えていた検索の売り上げへの効果を可視化し、共通認識のできるエビデンスがあれば、検索にどれだけ投資するかの話ができるようになります。

 中規模分析の例では、売り上げに対する重回帰分析を使ったキャンペーン施策の評価ですね。店頭の売り上げをKGIにすると、「インフォマ」のように、マスでリーチできるものが効いているように見え、ソーシャルメディアでの再生率や分散型メディアのPVを適正に評価できないのです。そこで、「店舗ベースの売行(推計)」と「人ベースの売行(推計)」に分けて分析すると、ある期間の10代の反応がいいことがわかりました。はっきりは断定できないまでも、意味があったかどうかの評価ができ、分散型メディアの効果に関する認識を共有できました。

塩見:重回帰分析をやると、確かにデジタルが小さく見える傾向があります。そこで、その結果を見て終わるのではなく、人ベースに戻して新しい顧客が獲得できたことを見るわけですね。廣澤さんの話からは、一つのデータだけで正解を見極めるのは難しいけれども、多面的に見ることが重要だという示唆を得ることができます。

 関連した質問になりますが、メディアへの効果を知見として獲得したのは、先ほどの再現性の担保につながるのではないかと思います。この取り組みを他のブランドに活かすことはやったのでしょうか。

廣澤:鋭い指摘ですね。でも実はこの分析の横展開はしていないのです。この分析はヘアアレンジ商品だったのですが、若年層向けの施策を横展開してスケールできる商品ブランドは少ないのです。若年層向けに可愛いコンテンツを作ってアプローチしようとしても、敏感肌向けの「キュレル」のようなブランドは目的や課題が異なります。花王はブランドの数が多く、カテゴリーも多岐に渡るので、横展開してスケールという点では難しい場合が多いと思います。

塩見:ブランドのターゲットが違うとやり方も変わるということだと思いますが、ものの見方はどのブランドでも参考になりそうですね。

小規模分析で重要なこと

廣澤:共通のインフラとして他のブランドに展開する考えは、一つの企業にいる以上大事なことですし、それと同時に事例を積み上げることも組織の中では重要だと思います。

 事例の話に戻ると、小規模分析ではBLSがあります。BLSは、メディアやプラットフォーマーがサービスとしてやってくれるケースと、広告主が舵を取って行うケースがありますが、時系列の観点が抜けていることがよくあります。典型的なのが、広告接触グループと非接触グループで、どの程度スコアが上がったかという分析で、広告想起率が最も高いスコアを示しているような結果が提示されます。ですが、広告接触があった場合、広告想起率は当然高くなるので、広告主としては正直言って必要性の低い指標なのです。広告を想起した先の消費者の心を動かすために分散型メディアに投資しているのですから、広告主としての責任を考えると、インテージさんのシングルソースパネルを使うことなどが1つのソリューションと考えています。

塩見:ありがとうございます。

ブランドリフトサーベイ(BLS)とインテージのシングルソースパネル
ブランドリフトサーベイ(BLS)とインテージのシングルソースパネル

廣澤:事前と事後、接触と非接触のクロス集計ができるのが重要なのです。広告に接した人が本当に購買率の上昇に寄与しているか。N値は少なくても、人が動いたことはわかります。最終的な店頭の全国の売り上げに関連付けるのは、他の変数も多いので難しいとしても、少なくとも一つの施策としての媒体の出稿が適切だったかは判断できるわけです。

 一方、簡易なBLSでは、自社ブランドと競合ブランドを比較した時に、自社ブランドのブランド想起率が上がっているように見えても、検定をかけてみたら、スコアの5%の差は有意ではなかったという結果になりました。個人的にはその広告のコンテンツは良かったと思いますが、統計的に有意か否かは広告主としてはシビアに確認すべきです。

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進む内製化の流れへの適応

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/04/13 09:00 https://markezine.jp/article/detail/28146

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