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西口一希と考えるマーケティング視点の経営

「100%顧客と向き合うのがCMOの役割」スマニュー西口✕ニトリ田岡のマーケティング視点の経営

先頭に立つCMO、後ろから荷車を支えるCEO

西口:本当ですね。一体型というのは、勝手な意見ですが、まさにスティーブ・ジョブズさんや孫正義さんですね。

田岡:そうですね、ユーザー感覚をもってアイデアを出しながら、組織全体を引っ張るリーダーでもある。サイバーエージェントの藤田晋さんも、完全にそうだと思います。ただ、そういった創業経営者は本当に稀で特別な存在であり、特に大企業では一般的にCEO=CMOというのは本当に難しいと思います。

西口:すると、基本的には分かれているほうがいいと思う?

田岡:できるなら一体型がいいのかもしれませんが、僕個人は、今はマーケティング関連の仕事に専念するほうがいいです。採用計画や人事制度を作りながらよりは、広告クリエイティブやEC戦略だけを考えるほうが今は面白いです。

 当社の場合、製造物流小売業と自称しているように、川上から川下までバリューチェーン全体のインフラを整備する必要があり、その対象が日本、アメリカ、中国、台湾、ベトナム等という地域にまたがり、しかも法人事業部やリフォーム事業部まであります。その社長業はとても守備範囲が広く本当に大変だと思いますし、全面において最前線に立つというのはなかなかリアリティがないと思います。

西口:僕もロクシタンで給与制度と評価制度の設計をゼロベースでやり直しましたが、全く同感です(笑)。

田岡:CEOとCMOがいる場合、どっちの方向に行くのかを最終的に決めるのはもちろんCEOです。例えば北に行くと決めたなら、除雪車を買い、タイヤにチェーンを巻き、皆の防寒具を備えるという投資をする。そして会社のインフラを整え支えるように荷車を後ろから押していくのが一般的なCEOの役割かと思います。後ろからでしたら荷車全体がよく見えます。

 逆に先頭に立っていくのが、CMOだと思います。顧客と向き合うビジネスの最前線に立ち、市場の変化をいち早く感じて、道を切り拓いていき、それをみんなにフィードバックしていく。

「北じゃない、南だ!」と言えるか

西口:そうすると、経営に対するマーケティングの役割とは、何でしょうか?

田岡:意思決定をした時と環境等が大きく変わり、進む方向が間違ってしまっている、ということもありますよね。「北だと思ったけど、南なんじゃないか?」って。それに最初に気付けるのが最前線にいるCMOだと思います。そのときにCEOと組織全体に「北ではなくなった、南だ!」と提言できるかどうかが、CMOのいちばん重要な役割なのではないかと思います。

西口:なるほど。それはとても腑に落ちるんですが、でも、ものすごいハレーションが起きますよね?

田岡:起きますね(笑)。北に行くためにインフラ整えていますから、南となったら装備から車輌まで何から何まで変えないといけない。おっしゃるとおりハレーションしかない。でも、そのタイミングで言わなかったら後々もっとひどいことになります。

西口:ではそこで、何をもって提言を信じてもらうのでしょう? ファクトなのか、それとも「お前のいうことなら」といった、信頼?

田岡:難しいところですが、きっと両方なんでしょうね。ファクトはもちろん重要だし、数字を見れば明らかだという局面ならファクトだけでいいんでしょうが、企業が進む方向というのは最終的には未来のことなので、データだけでは絶対に答えが出ません。データで補強するにしても、起点は自分の頭で考え抜いて出した仮説になるんだと思います。

 それに加えて日頃より意思決定者と感覚の摺り合わせを行っておくことが重要なんだと思います。短時間で感覚の違いを言語や数字で埋めるのは難しく、日頃の感覚交換が重要になるのではないでしょうか。

後編では、CMO論をさらに掘り下げるほか、マーケティングの商品開発への関わり方、若手マーケターのキャリア形成まで幅広くお届けします。お見逃しなく!

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この記事の著者

西口 一希(ニシグチ カズキ)

大阪大学経済学部卒業、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)マーケティング本部に入社。ブランドマネージャー、マーケティングディレクターを歴任。ロート製薬 執行役員マーケティング本部長として「肌ラボ」「Obagi」「メラノCC」「デオウ」「ロート目薬」などの60以上のブランドを統括。ロクシタンジャポン代表...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/05/07 08:00 https://markezine.jp/article/detail/28201

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