デジタルの普及でレビューは双方向になった
デジタルの普及により、生活者の行動は劇的に変化している。特にその影響が顕著なのは、購買体験だろう。欲しいものが思い浮かんだ瞬間に検索し、レビューをチェック。あるいは、店頭で偶然出会った商品でも、その場でまずレビューや最安値を調べる。
「カスタマーエクスペリエンスにおいて重要な要素は複数あります。今回はその中から当社の知見が深い、レビューに焦点を当ててお話ししたい」と、ZETA 代表取締役社長の山崎徳之氏。
同社はカスタマーエクスペリエンスに着目したマーケティングソリューション「ZETA CXシリーズ」を提供している。特にサイト内検索エンジン(※)の「ZETA SEARCH」は各業界の大手企業を中心に高い支持を得ており、近年では、検索とレビューの親和性から、レビューを実装・分析できる「ZETA VOICE」も併せて導入するケースが増えているという。
山崎氏は前提として、デジタル化をもたらした3つの大きな要素を挙げる。コンピューターの登場、ネットワーク化/インターネットの普及、そしてスマートフォンの浸透だ。
レビューの歴史は古く、新聞や雑誌での識者による商品講評などが典型例として挙げられる。だが、上記3つの変化によってあらゆる情報流通が双方向になり、個人がレビューを発信できるようになり、そのレビューが他の個人や企業によって活用されるようになった。情報の流れが双方向になった点が、昔との大きな違いだ。
「買った人の率直な感想は、これから買う人にとって非常に参考になる情報」と山崎氏。レビューの双方向化によって、そんな価値ある情報がネット上に膨大に流通するようになった。
オウンドメディアのアーンドメディア化がカギ
前述の3つの要素は、情報を扱うマーケティングにも、当然ながら大きな影響を及ぼしている。山崎氏は人の動きをコントロールする信号機を例に、マーケティングも信号機と同じ、ある種の「制御モデル」だと話す。
「そもそもマーケティングは、生活者に振り向いてもらったり行動してもらったりと、人の行動を誘導することが根幹にあります。すると、位置情報を含めて今この瞬間の生活者の状況を捉えて情報を出し分けられるスマホは、この制御モデルにおける『制御力』を一気に強める手立てになります」
この背景の下、企業にとっても、生活者がみずから発信するカスタマーレビューの活用は、もはや無視できないものとなっている。スマホで自由に情報の受発信ができる時代であり、特にSNSは口コミの共有に相性がいい。相対的に、企業が一方的に発信する情報の価値が薄れているともいえる。その点でもカスタマーレビューの重要性は増してきているのだ。
この傾向を裏付ける事象のひとつに、山崎氏が指摘する「オウンドメディアのアーンドメディア化」がある。極端な例では、Amazon.comは間違いなくAmazonが所有するプラットフォームでありながら、そこに書き込まれているレビューはユーザーの手によるもの。したがって、オウンドメディアであり、アーンドメディアだと言える。
ZETAが以前実施したインターネットショッピングに関するアンケートによると「レビューを目的にWebサイトを訪れる人は79.8%」という結果が出ている。カスタマーレビューによる、オウンドメディアのアーンドメディア化は急務だと言える。