SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第99号(2024年3月号)
特集「人と組織を強くするマーケターのリスキリング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

MarkeZine Day 2018 Spring(AD)

購買を後押しするレビューを無駄にしていないか?レビューと検索の活用による「カゴ前」CROの可能性

 買い物前に、ネット上でレビューをチェックする。それはもはや私たちにとって当たり前の行動だ。サイト内検索エンジンやレビューエンジンを提供するZETAの山崎徳之氏は「集客前のSEOや、カート落ち対策には注力していても、集客からカートに入れるまでのマーケティングは見過ごされがち。ここでレビューを活用すると、ファネルの狭まりを最小限に抑えることができる」と話す。3月8日、9日に開催された「MarkeZine Day 2018 Spring」では、レビューと検索の活用によるカスタマーエクスペリエンスの向上が解説された。

デジタルの普及でレビューは双方向になった

 デジタルの普及により、生活者の行動は劇的に変化している。特にその影響が顕著なのは、購買体験だろう。欲しいものが思い浮かんだ瞬間に検索し、レビューをチェック。あるいは、店頭で偶然出会った商品でも、その場でまずレビューや最安値を調べる。

 「カスタマーエクスペリエンスにおいて重要な要素は複数あります。今回はその中から当社の知見が深い、レビューに焦点を当ててお話ししたい」と、ZETA 代表取締役社長の山崎徳之氏。

ZETA株式会社 代表取締役社長 山崎徳之氏
ZETA株式会社 代表取締役社長 山崎徳之氏

 同社はカスタマーエクスペリエンスに着目したマーケティングソリューション「ZETA CXシリーズ」を提供している。特にサイト内検索エンジン(※)の「ZETA SEARCH」は各業界の大手企業を中心に高い支持を得ており、近年では、検索とレビューの親和性から、レビューを実装・分析できる「ZETA VOICE」も併せて導入するケースが増えているという。

 山崎氏は前提として、デジタル化をもたらした3つの大きな要素を挙げる。コンピューターの登場、ネットワーク化/インターネットの普及、そしてスマートフォンの浸透だ。

 レビューの歴史は古く、新聞や雑誌での識者による商品講評などが典型例として挙げられる。だが、上記3つの変化によってあらゆる情報流通が双方向になり、個人がレビューを発信できるようになり、そのレビューが他の個人や企業によって活用されるようになった。情報の流れが双方向になった点が、昔との大きな違いだ。

 「買った人の率直な感想は、これから買う人にとって非常に参考になる情報」と山崎氏。レビューの双方向化によって、そんな価値ある情報がネット上に膨大に流通するようになった。

オウンドメディアのアーンドメディア化がカギ

 前述の3つの要素は、情報を扱うマーケティングにも、当然ながら大きな影響を及ぼしている。山崎氏は人の動きをコントロールする信号機を例に、マーケティングも信号機と同じ、ある種の「制御モデル」だと話す。

 「そもそもマーケティングは、生活者に振り向いてもらったり行動してもらったりと、人の行動を誘導することが根幹にあります。すると、位置情報を含めて今この瞬間の生活者の状況を捉えて情報を出し分けられるスマホは、この制御モデルにおける『制御力』を一気に強める手立てになります」

 この背景の下、企業にとっても、生活者がみずから発信するカスタマーレビューの活用は、もはや無視できないものとなっている。スマホで自由に情報の受発信ができる時代であり、特にSNSは口コミの共有に相性がいい。相対的に、企業が一方的に発信する情報の価値が薄れているともいえる。その点でもカスタマーレビューの重要性は増してきているのだ。

 この傾向を裏付ける事象のひとつに、山崎氏が指摘する「オウンドメディアのアーンドメディア化」がある。極端な例では、Amazon.comは間違いなくAmazonが所有するプラットフォームでありながら、そこに書き込まれているレビューはユーザーの手によるもの。したがって、オウンドメディアであり、アーンドメディアだと言える。

 ZETAが以前実施したインターネットショッピングに関するアンケートによると「レビューを目的にWebサイトを訪れる人は79.8%」という結果が出ている。カスタマーレビューによる、オウンドメディアのアーンドメディア化は急務だと言える。

レビュー未着手のサイトには伸びしろがある

 また、2011年のイギリスの"The impact of customer reviews and ratings on conversion rates"という調査によると、ECサイト上でレビューが0件から10件に増加するとCVRが1.5倍、50件になると2倍になるという結果も報告されている。

 「これは、レビューに取り組んでいないサイトには相当な伸びしろがあるということ」と山崎氏。「ECが先行して発展した欧米のほうが、生活者のレビューに対する注目度は高いものの、日本でも早晩こうした状況になるでしょう。同じ広告費でサイト訪問者を倍にするのは難しいですが、訪問している人のCVRを倍にできる可能性があるならすぐにやるべき。その方法として、レビューの活用は大きなチャンスです」(山崎氏)

 レビューがそこまで購買に有力な情報になっているのは、生活者の「商品の価値をできるだけ適切に捉え、後悔しない買い物がしたい」というモチベーションの高まりも影響している。ここでの価値を、山崎氏は「本質的価値」と表す。

 今この瞬間、商品XのAさんにとっての価値とBさんにとっての価値は違う。また、人が同じでも明日に新型が出れば、Xの価値は急に下落して、安価に買えるかもしれない。

 「生活者が知りたいのはスペックのような客観的な指標となる情報だけでなく、他者が使用した感想や購入動機、返品率などといった、受け取り手によって影響力が異なる情報も重要です。こうした情報を適切に伝えることで、『本質的価値』を実感して買い物したいという生活者のニーズに応えない企業は、もう振り向いてもらえないという事態も起きています」と山崎氏は指摘する。

透明性ある情報提供で生活者の買い物を助ける

 自社製品に対するユーザー主導の情報を積極的に公開するとなると、企業による情報コントロールは難しくなる。それでもこの「情報の透明性」こそ、今求められている要素だと山崎氏は強調する。

 もちろん、わざわざレビューを見るまでもなく、一瞬の判断で購買される消費財のような商品も多数ある。コーヒーやタバコなら、それを楽しむシーンや選んでいる自分が好ましいといった印象が購買を左右することもある。

 だが、価格を比較したり口コミをチェックしたりと、買うまでに生活者が一定の時間や労力を費やす商品の場合は、生活者の調べるプロセスにかかるコストを減らせるかどうかが、今後のセールスに影響してくるだろう。

 映画や本などのコンテンツも、後者に該当すると山崎氏。好みの差が大きいため、選ぶときに「失敗したくない」という気持ちが強くなるからだ。

 「透明性の高い情報が特に重要なのは、買ってから『よかった』『悪かった』という感想が出やすい商材です。その場合、企業はユーザーレビューも含めて透明性のある情報提供に配慮し、カスタマー目線で本質的な価値の可視化に努めて、生活者の買い物を助けていくことが重要になります」

 ここで手がかりになるのは、昨今よく言われるようになった「カスタマーエクスペリエンス」の概念だ。まず商品を知り、商品情報やユーザーレビューなどによって購買意向が高まり、実際に買って使用し、場合によっては周囲に勧めたり、あるいはカスタマーサポートを受けたりする。

 「この一連のカスタマーエクスペリエンスを向上させるのに、CRO(Conversion Rate Optimization)への取り組みが有効」と山崎氏は提案する。

「カゴ前」CROでファネルの狭まりを最小限に

 CROとは一般的に、SEOと対になる概念として語られる。購買ファネルの直径を広げるのが集客までを担うSEOであり、ファネルの途中で直径をできるだけ狭めないよう離脱防止を図るのが集客以降から購買までを担うCROだ。

 これは言うまでもなく、売上に直接貢献する取り組みである。もちろん、集客が先になければCROに注力しようがないため、SEOは欠かせないが、CROにもっと配慮すれば、集めた人を最大限コンバージョンにつなげられる。

 さらにCROはカートに入れるまでを境に、「カゴ前」「カゴ後」の二つに分けることができる。

 「カゴ前とカゴ後、どちらも重要ですが、私はカゴ前のほうがより重要だと考えています」と山崎氏。サイトに来た人にカゴに入れてもらうまでと、カゴに入れた人に買ってもらうまでなら、前者のほうがファネルの狭まり、つまり離脱が多いからだ。

 「また、カゴ後の“カゴ落ちユーザー”へのアプローチはいろいろなソリューションが出ていますが、カゴ前のユーザーにアプローチするソリューションはほとんどありません。ここはリアルタイムな分析やデータ連携が必要で、アイデアを出すのが難しいといった理由もありますが、まだカゴ前のCROに本腰を入れていない企業が多いだけに、この部分に注力することで差をつけられます」(山崎氏)

 ここで効いてくる策のひとつは、サイト内検索だ。来訪したものの、欲しい商品を検索しても、在庫切れの商品や視点のずれた商品ばかりが上位に出てくると、当然すぐに離脱してしまう。

サイト内検索とレビューの相乗効果

 もうひとつの策が、ここまで紹介してきたレビューである。カートに入れる前のユーザーは、いくつかの商品レビューをチェックし、率直なユーザーの声を参考に購入する商品を定めてカートに入れる。レビューは確実に、カゴ前のCROに効いている。「レビューの提供は、生活者の『失敗したくない』というニーズを満たすことになる」と山崎氏は解説する。

 さらに、検索とレビューは補完関係にあることにも着目したい。レビューはテキストのほかに、星や点数を投稿するのが一般的だ。それは、サイト内で商品を検索して表示させる際の、結果を並び替える上での重要な要素になる。価格順や発売日順以外に、レビューの評価が高い順というソートができるからだ。同時に、検索の精度を高める要素が増えることにもなり、チューニング次第でより高い効果を見込めるだろう。

 なおかつ、レビューはテキストが中心であるだけに、ユーザーが広いネットの海から参考になる口コミを探すのは難しい。そこでサイト内の検索エンジンでレビューを検索してもらえれば、ユーザーは参考になる情報を手軽に見つけることができる。

 「この補完関係によって、カゴ前のCROに好循環を生み出すことができます」と山崎氏。冒頭に述べた、ZETAの検索ソリューションを導入している企業でレビューのソリューションも実装するケースが増えていることは、このシナジーの価値を裏付けている。今後カスタマーエクスペリエンスの向上に取り組むなら、間違いなくレビューは重要な要素になる。そう強く印象づけられるセミナーとなった。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
関連リンク
この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2018/04/26 12:00 https://markezine.jp/article/detail/28237