レビュー未着手のサイトには伸びしろがある
また、2011年のイギリスの"The impact of customer reviews and ratings on conversion rates"という調査によると、ECサイト上でレビューが0件から10件に増加するとCVRが1.5倍、50件になると2倍になるという結果も報告されている。
「これは、レビューに取り組んでいないサイトには相当な伸びしろがあるということ」と山崎氏。「ECが先行して発展した欧米のほうが、生活者のレビューに対する注目度は高いものの、日本でも早晩こうした状況になるでしょう。同じ広告費でサイト訪問者を倍にするのは難しいですが、訪問している人のCVRを倍にできる可能性があるならすぐにやるべき。その方法として、レビューの活用は大きなチャンスです」(山崎氏)
レビューがそこまで購買に有力な情報になっているのは、生活者の「商品の価値をできるだけ適切に捉え、後悔しない買い物がしたい」というモチベーションの高まりも影響している。ここでの価値を、山崎氏は「本質的価値」と表す。
今この瞬間、商品XのAさんにとっての価値とBさんにとっての価値は違う。また、人が同じでも明日に新型が出れば、Xの価値は急に下落して、安価に買えるかもしれない。
「生活者が知りたいのはスペックのような客観的な指標となる情報だけでなく、他者が使用した感想や購入動機、返品率などといった、受け取り手によって影響力が異なる情報も重要です。こうした情報を適切に伝えることで、『本質的価値』を実感して買い物したいという生活者のニーズに応えない企業は、もう振り向いてもらえないという事態も起きています」と山崎氏は指摘する。
透明性ある情報提供で生活者の買い物を助ける
自社製品に対するユーザー主導の情報を積極的に公開するとなると、企業による情報コントロールは難しくなる。それでもこの「情報の透明性」こそ、今求められている要素だと山崎氏は強調する。
もちろん、わざわざレビューを見るまでもなく、一瞬の判断で購買される消費財のような商品も多数ある。コーヒーやタバコなら、それを楽しむシーンや選んでいる自分が好ましいといった印象が購買を左右することもある。
だが、価格を比較したり口コミをチェックしたりと、買うまでに生活者が一定の時間や労力を費やす商品の場合は、生活者の調べるプロセスにかかるコストを減らせるかどうかが、今後のセールスに影響してくるだろう。
映画や本などのコンテンツも、後者に該当すると山崎氏。好みの差が大きいため、選ぶときに「失敗したくない」という気持ちが強くなるからだ。
「透明性の高い情報が特に重要なのは、買ってから『よかった』『悪かった』という感想が出やすい商材です。その場合、企業はユーザーレビューも含めて透明性のある情報提供に配慮し、カスタマー目線で本質的な価値の可視化に努めて、生活者の買い物を助けていくことが重要になります」
ここで手がかりになるのは、昨今よく言われるようになった「カスタマーエクスペリエンス」の概念だ。まず商品を知り、商品情報やユーザーレビューなどによって購買意向が高まり、実際に買って使用し、場合によっては周囲に勧めたり、あるいはカスタマーサポートを受けたりする。
「この一連のカスタマーエクスペリエンスを向上させるのに、CRO(Conversion Rate Optimization)への取り組みが有効」と山崎氏は提案する。