伝説のシューフィッター三村氏の言葉から伝わるストーリー
――一般的に、スポーツブランドのプロモーションは契約している選手やチームのエピソードを交えたコンテンツが多い印象があります。今回は、記事のクリエイティブも通常と少し違いましたよね。
山崎:はい。今回のタイアップ記事は、スポーツ系メディアにおいて試合や選手・商品以外のテーマでもブランドリフトは起こるのかという、チャレンジングな企画でもありました。
制作したタイアップ記事は、ニューバランスがアドバイザリー契約を結んだ三村仁司氏へのインタビュー記事でして、彼のシューズ作りのこだわりをメインに構成しています。
三村氏は、様々な分野のトップアスリート達のシューズ開発に携わり、彼らの大舞台でのチャレンジをサポートし続けてきたシューズ職人です。そのクラフトマンシップ的なストーリーを届けることで、読者にブランドに対する期待感を持っていただき、ニューバランスのチャレンジ精神をメッセージとして届けたいと考えました。
金谷:調査結果を見ても、ブランドイメージに対し「信頼できる」という回答が二番目に多かったんです。タイアップ記事の内容を、よく理解してもらえていることがわかります。
もともとニューバランスが好きだから熟読した方もいるかもしれません。ですが、熟読層はブランドにポジティブな印象を持っていると明確になったことに意味があると考えています。
山崎:金谷さんがおっしゃる通り、ブランドリフトの成果以上に、読了率とブランドに対する好意度の関係性を数値化できたのは、意義深いことだと思います。コンテンツの文脈・内容を咀嚼し、読者がきちんと消化している。こうした行動を数値化してくれるのが読了率であり、次のアクションを考える指標になると思います。
今後は、読了率をどのように活用していくかが重要
――今回の調査結果を受けて、今後はどのようなマーケティングを進めていく予定ですか?
金谷:指標として読了率を定着化していくため、同媒体で実施した他のタイアップ記事の読了率や、一般記事の読了率・他メディアでの読了率など、比較するためのデータ収集が必要だと考えています。
なぜなら、読了率の数字だけでタイアップ記事の成果の良し悪しを判断するのが、必ずしも正しいとは言えないからです。ここが重要です。
たとえば、タイアップ記事と一般記事の読了率が同じくらいだったとしましょう。通常、タイアップ記事はノンスポンサードの記事に比べて読まれない傾向がありますから、仮に読了率の数字自体が低くても、この場合はタイアップ記事にしてはよく読まれたと判断できるのです。
またメディアの特性によっても、記事ごとの読了率は変わってきますから、1記事の読了率の数字だけで成果の良し悪しを図るのは難しいのです。
――読了率は、メディアごとに総合的に判断していく指標として活用できるんですね。読了率を基に、相性の良い媒体や読まれやすいコンテンツを探ることもできますね。
山崎:タイアップ記事によるキャンペーン施策においても、これまでの施策や他社の施策と比較するためのデータは必要です。マーケティング施策の検証を行う時、経営層や社内を動かせるような、成果共有の方法を確立させるためにも、読了率はひとつのカギになると考えています。
しかし、データは成果測定だけでなく、消費者とのコミュニケーションを最適化するための材料でもあります。データドリブンで、すべての行動が予測・可視化されていくという考え方がありますが、データを基に設計された最適な顧客体験を企業から一方的に送り付けるのは、避けなければならないと思います。