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Overture出身の先駆者たちの選択と次の一手

【上野×杉原対談】オーバーチュアがネット広告市場にもたらした衝撃/業界の歴史と未来を語る


オーバーチュア出身者の強さの要因

――オーバーチュア出身のたくさんの方たちは、その後もデジタルマーケティング業界で活躍されていますね。

杉原:もともと力のある人が集まっていたのでしょうが、オーバーチュアで経験できた多くのことが今活きていると思います。先程上野さんがおっしゃっていた、メディアの収益最適化の方程式、広告を出す広告主の目標達成のための最適化手法などは、広告プラットフォームビジネスの原型のようなものですから、どこに行っても、方程式の構成要素に対して、営業的に、マーケティング的に、なにをすればよいかというのは叩き込まれている人が多いと思います。

 今でいうA/Bテストも当たり前のようにやっていました。例えば検索結果の件数、表示文字数、行間・文字間・文字の色など、日々必ずバケットテストをしていた。A/Bテストや、その後出てきたLPOの重要性はよく理解できていましたね。

 先程申し上げた代理店制度、代理店や広告主に対するサービスレベル設計、掲載ガイドライン、社内の営業プロセス策定も、今とても活きていると思います。

 そういう成功体験があるから、その後のデジタルマーケティングの立ち上げや、プラットフォーマーとしての仕組みづくりに強いのかもしれません。

――上野さんはその後Criteoの代表取締役に移られましたよね。何に惹かれたのでしょうか。

上野:検索連動型広告が市場に普及し始めると、だんだんサーチクエリのボリュームも減少し、また競合が増えたので入札金額も上昇するようになったのです。さっきお話ししたように、検索連動型広告費は営業費なので、ROIが担保されないと投資できません。そこで、検索連動型広告のように効果があるけれど、さらに費用対効果が優れた施策を求めるようになった。そこで出て来たのが、リターゲティング型のディスプレイ広告です。その可能性を感じ、Criteoに移りました。

広告、コンテンツ、そして広告主にどう貢献するか

――Criteoの登場は、ディスプレイ広告の価値が見直される大きな転機だったと思います。そんな上野さんは、現在BuzzFeedの代表を務められていますが、今後はどのようなことを見据えていらっしゃるのでしょうか。

上野:コンテンツサイドからいえば、本当に楽しめるコンテンツはもっとたくさん出てくるのではないかと思っているんです。今、29歳以下の日本の若い層は19.8%がテレビ端末をもっていないといいますが、テレビを見ないのではなく、YouTubeで動画は視聴します。つまり、地上波で作られている番組には興味がないんです(内閣府「消費動向調査」)。

 そうかといって、YouTubeだけで事足りるわけではなく、もっと違う、楽しめるコンテンツを欲しているのは事実です。BuzzFeedでは、そうしたニーズについて、データを見ながら分析して記事を作っています。事実、この1年で18歳〜34歳の読者層の比率が、29%から43%に拡大しました。

 これだけの人が集まるということは、それは広告価値にもつながります。企業の宣伝広告費は2兆円といわれる中、地上波の視聴者は減っているので、その分おもしろいコンテンツが集まっているところへの投資があるはずです。こうして、本当にいいコンテンツを作っているところに収益が還元されるようにすることが目標の1つです。

 もう1つは、日本の優れたコンテンツを世界に発信すること。せっかくインハウンドで訪問する海外の方がいて、日本を体験してくれるのだから、帰国した後もその体験を思い出し、次の消費につながるコンテンツがあるといい。そうした世界に貢献したいですね。

――杉原さんはその後アタラを起業しましたよね。どういう背景で、どのようなことをしているのでしょうか?

杉原:オーバーチュア、グーグル両社で運用型広告の営業戦略に携わった後、2009年にアタラを創業しました。

 当時から取り組んでいたAPIを使った自動化・効率化を実現したかったのが理由としては一つ。検索連動型広告は効果は高かったですが、マーケティング施策全体で、それぞれの施策の貢献度をもっと理解した上で、予算やリソースの最適配分、つまりアトリビューションに興味をもったのがもう一つの理由です。どちらもプラットフォーム企業の外で取り組む必要があると個人的に思ったため起業しました。今はそれらを含め、データを活用して、業界のさまざまなプレーヤーに対し、ナレッジやテクノロジーをベースにしたコンサルティングを提供しています。

 オーバーチュアの当時の仲間は事業会社、広告代理店、広告プラットフォーム、テクノロジーベンダー、コンサルティング会社など、さまざまな場で活躍しています。我々の中のつながりもとても強いです。

 どのような立ち位置の会社にいても、私たちが経験して来たことは役立つと思うんですよ。あの時の成功経験をベースに、これからのトレンドや先の未来についても考慮し、次の戦略を考え、ビジネスを構築できるようになった。今のデジタルマーケティングに対し、オーバーチュアが与えたインパクトは大きかったので、これからはそれを活かして業界にさらに良くしていくお手伝いをしたいですね。

――ありがとうございました。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/08/28 12:39 https://markezine.jp/article/detail/28546

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