地域に特化した番組の視聴のされ方
放送の地域性は「制約」というある種ネガティブなものとして捉えることもできますが、地域ごとに放送局が存在していることは各放送局が自局の放送地域に特化した番組を配信しやすいというポジティブなものとして捉えることもできます。地域に特化した番組はどのように視聴されているでしょうか。「Media Gauge TV」のデータを使って分析してみます。
Media Gauge TVにおけるスマートTVのデータは日本全国で約61万台という膨大なサンプルサイズで収集されており、市区町村レベルの分析でも一定のサンプルサイズを確保できるため、視聴傾向の詳細なエリア差を把握することができます。
特定の地域を特集した番組として2018年4月14日(土)にテレビ東京系列で放送された「アド街ック天国」を取り上げてみます。この回は八王子市が特集され、関東広域計での番組平均接触率は4.4%という結果でした。図表2は番組平均接触率で市区町村別に色分けしたデータです。色が濃い市区町村ほど接触率が高いことを意味しています。
特集された八王子市(17.1%)を中心に周辺のあきる野市(11.8%)や相模原市緑区(10.2%)でも接触率が高くなっていることがわかります。八王子市はもちろん、その西に位置する市区町村の人々も八王子への関心が高いようです。
また、八王子市の接触率の17.1%は関東広域計の接触率である4.4%の約4倍にもなっており、地域に特化した番組がその地域の人々から非常に高い関心を持たれていることがわかります。
地域ごとに放送局が存在していることは「制約」と見ることもできますが、各地域の人々の関心に寄り添った番組を制作しやすいということが地域性の本来の長所です。何気なくつけたテレビの画面で地元のスポーツチームの試合が中継されている、選挙や災害などの際に地元の情報をまず先に得ることができる、などの私たちがテレビを通して当たり前のように経験していることは放送の地域性にもとづくものと言えます。ネット上の動画サービスにはない、非常に「テレビらしい」経験と言えるのではないでしょうか。
ちなみにですが、テレビ東京系列の民放を持たない山梨県や静岡県でも一定の接触率となっているのはケーブルテレビによる区域外再放送による視聴であると考えられます(山梨県の上野原市、大月市では約12%)。区域外再放送まで含めた各地域のテレビ視聴の「実態」を把握できるのもスマートTVデータの特徴の1つです。
▶調査レポート
「動画配信サービスにはない『テレビらしい』楽しみ方とは?―ライフログデータが示す、メディアの未来#1」(Intage 知る gallery)
