ユーザー、テクノロジー、マーケティングの3軸を重ねて企業を支援
―― 特にデジタルマーケティング支援に特化しているわけではないんですね。
そうですね、デジタルマーケティングにも関わると思いますが、広い意味での企業支援です。あえてコンサルタントやコンサルティングとも言わないようにしているのですが、なぜかというと、コンサルティングのゴールは「納品」になってしまうから。僕がやりたいことは、100ページのドキュメントを作ることではなく、「事業をどのような視点(Point of View)で考え、成長要因となる指標を見つけるか」ということなんですよ。
医療で例えるとわかりやすいと思うのですが、人間の場合は病気になると病院に行って、診断を受けますよね。ところが企業が病を抱えると、診断だけではお金にならないから、いきなり治療から始まるんです。裏を返せば、治せるもの以外はやらないという状態を生み出しているわけです。そうではなく、僕は診断と治療の2つを重視したいと考えています。原因となる指標を診断で見つけ、それを改善するアドバイザーになりたいんです。
―― 具体的な職種でいうとアドバイザーになるのでしょうか?
そうなりますね。米国だとアドバイザーという職種は一般的で、いろいろな企業が、テクノロジーなりマーケティングなり、特定分野のアドバイザーを雇っているんです。僕はそういうアドバイザーを流行らせたいと思っています。
そうすると、他の人もアドバイザーという職種に就けるようになりますし、企業はアドバイザーの視点を手に入れやすくなる。必要ならば、ニーズに合う様々なプロフェッショナルを紹介し、プロジェクトにともに取り組む。そして企業を成長させていくわけです。
ユーザーファーストの時代なのに、その視点を持つ企業は少数

―― 先ほど、デジタルマーケティングに特化しないという話がありましたが、これから菅原さんが企業支援を行う上で、どこにフォーカスしていくのでしょう?
テクノロジーやマーケティングに強い方は他にもたくさんいらっしゃいますが、僕の強みは一貫してユーザーに着目してきたことです。いろいろな企業の方とお話しすると、ユーザー視点で自社の商品やサービスを定義付けできていない、していないことに気が付きました。そこで僕は「ユーザー」、そして「マーケティング」「テクノロジー」という円の重なりをビジネスにしていくつもりです。
―― ユーザー視点の大切さはよくいわれていますが、実践はなかなか難しいですよね。
企業が発するメッセージを見ても、ユーザーが欲しい情報ではなく、企業が伝えたいことになっているケースは枚挙にいとまがありません。ユーザーを見ているようで、きちんと見ていない企業も多いです。
たとえばテレビ局の場合、「このドラマはユーザーから見ておもしろいかどうか」という議論をしがちですが、今のネット動画やインスタグラムに慣れたユーザーなら、「テレビ局の番組はダラダラと長くてピークがない」という印象を持つ人が多いのではないでしょうか。テレビ局が本当にユーザー視点に立つのであれば、内容や構成はもちろんですが、「そもそも尺がこれだけ必要なのか?」という議論が出てきてもいいと思うんです。
メーカーと流通も同じです。直接ユーザーとの接点がないメーカーは、下手をすると「ユーザーとの接点を持つ流通の下請け」という立場になりかねません。最近はECというチャネルを使って直接ユーザーと接点を持つメーカーも増えましたが、顧客視点で考えるのなら、メーカーはECを売上チャネルの金額で論じるのではなく、Direct to Customerのチャネルとして捉えるべきなんです。ユーザーを知っているということは、それだけユーザーニーズに合ったものを開発できるわけですから。