効果的な学習ツールとして注目される「オーディオブック」
「音声学習」の効果は以前から指摘されているが、ビジネスマンを中心に音声学習の可能性が注目されるようになったのは、史上最年少(当時)の19歳で会計士試験の2次試験に合格し、『無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法』などのベストセラーを連発している経済評論家の勝間和代氏の存在が大きいだろう。勝間氏は、著書の中で音声学習の効果を紹介しているだけでなく、おすすめのオーディオブックを紹介するブログ「CD、テープを聴いて勉強しよう!!」を立ち上げている。
本を朗読した音声ファイルを、ネットで購入してダウンロードできるMP3ファイルとして販売しているオトバンクの設立は2004年。朗読会やオーディオブックが根付いている欧米とは異なる日本で、音楽以外の音声コンテンツとして、オーディオブックが受け入れられるかを疑問視する声もあったと取締役の久保田氏は語る。しかし、iPodなどの携帯用デバイスの普及によって、MP3ファイルの再生環境は大きく広がった。若いビジネスマンを中心に通勤電車の中で聴いたり、車を運転しながら聴く人はもちろん、手を動かしながら「ながら聞き」するSEもいるという。
音声化から著作権管理までワンストップで提供
オトバンクは、オーディオファイルの販売だけでなく、書籍の音声化から、ダウンロード販売、著作権管理まで、音声コンテンツに関わるあらゆる業務をワンストップで提供。同社が運営するオーディオブックのポータルサイト「FeBe(フィービー)」には、オーディオブック2000タイトルが並んでいる。これらの提供出版社には著作権使用料を支払うかたちになる。サービス開始当初は、出版社のほうから「これをやってほしい」と指定されることが多かったというが、最近ではどのタイトルを音声化するかの選択を任されることも多いという。
音声化するタイトルが決まったら、出版社の意向を踏まえて製作スタッフとともにその本に合った朗読者の選定から演出まで行う。オーディオブックというと、1人の朗読者が書籍を読み上げるものを収録するだけと思う人も多いかもしれないが、内容に合わせて複数名で掛け合いをしたり、役を割り振ったものを録音するなど、演出にも配慮している。久保田氏によると、アナウンサーのように読み上げるのが上手なだけでは、聞いている人を満足させることはできないというから、なかなか奥が深い。このように試行錯誤を経て音声ファイル化したタイトルが、「FeBe」で販売されるのである。