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定期誌『MarkeZine』特集

口コミが消費者の意思決定に及ぼす影響と活用の道筋

ポジティブな口コミを誘発するためのコミュニティ活用

 口コミという現象をザックリと捉えると、もちろん企業側は世の中にある口コミをコントロールすることはできない。口コミとは個人が発信する個人的な情報だからだ。

 しかし、だからと言って、企業のマーケターが「口コミ・マーケティングはできない」「口コミは危険だ」「SNSは怖い」と、身を引いてしまうのは大変もったいない。では、どうしたらポジティブな口コミや、第三者にとって参考になるような有意義な口コミを起こすことができるのか。ここでWOMMAが言う「喚起された口コミ」に着目すると、企業によるコミュニティ活用の現代的な意味合いが見えてくる。

 コミュニティへの注目は、近年高まるばかりだが、その理由は明らかだ。自社のファンや、好意を持っているユーザーを対象にコミュニティを運営したり、彼らの気持ちが動くような働きかけを行ったりすることは、ポジティブな口コミの喚起につながるからだ。

 この情報発信の参考にしたいのが、コミュニティ・マーケティングの可能性に関する情報を発信・共有・流通していくコミュニティ「CMC_Meetup(CommunityMarketing Community)」を主催する小島英揮氏による考え方だ(図表6)。

図表6 コミュニティ・マーケティングの考え方
図表6 コミュニティ・マーケティングの考え方

 小島氏によれば、かつてのコミュニティ・マーケティングは、コミュニティの人たちに対して売り込むことを主眼としていたが、今の時代は、彼らを通じて売ろうとすることを意識すべきだという。その結果、コミュニティ・マーケティングが上手に機能すると、彼らが企業の代わりに顧客を連れてきてくれるという。

 このメカニズムでコミュニティの人たちが発信する情報は、要するに口コミだ。企業が発信する情報にはある種の限界があるが、コミュニティの人たちが発信する口コミ情報は、より詳細な内容が可能だ。さらに彼ら一人一人の個人的な感想や意見が加えられている。それはユーザーの立場に立った、説得力のある内容と言うことができるだろう。

 つまり、WOMMAが「喚起された口コミ」として例示しているコミュニティの活用法は、小島氏が提唱するコミュニティ・マーケティングの考え方とほぼ同じなのだ。

BtoB企業も口コミ・マーケティングと無縁ではない

 なお、このコミュニティ・マーケティングの取り組みは、BtoC企業だけでなく、BtoB企業にも有効だ。たとえば筆者は、自社製品の勉強会を定期的に開催しているBtoB企業を知っているが、その勉強会では参加者からの質問を共有したり、フォローのメールを送ったりしている。製品の改善が行われた場合は技術者に直接内容を聞けるイベントや、新製品の先行モニター募集なども行っている。その企業は、自分たちの活動をコミュニティ・マーケティングと考えているかは不明だが、勉強会を「コミュニティ」と捉えれば、実はコミュニティ・マーケティングを既に行っていると言える。

 BtoB企業の場合、数ある商品から自社商品を選んでくれた顧客がいることを、もっと大切に考えるべきである。そして企業は「顧客満足度」を上げるべく、顧客の不安や質問、アフターサービスに、今以上に丁寧に対応すべきである。

 企業はそうした活動を通し、顧客を支持者に変えることで、「自然発生的な口コミ」を増やすことができるだろう。そして、顧客を集めた勉強会やセミナーや交流会を開催し、何らかのコミュニティを作り、彼らとコミュニケーションをとることで「喚起された口コミ」を発生させることができるだろう。

 理想はコミュニティの中で交流が生まれ、仲間どうしで口コミが活性化すること、企業がそのコミュニティの口コミを支援することだ。

 前述した小島英揮氏は、2016年まで、AWS(Amazon Web Services)のマーケティング本部長として国内のマーケティングを統括してきたが、その際に、AWSが提供するクラウドコンピューティングを利用する人々によるコミュニティ「JAWS-UG」を生みだした。この活動と普及はBtoB分野である。つまり、BtoB分野であってもコミュニティ・マーケティングは十分に可能だということであり、上手に運営できれば、企業と顧客がともに発展していくための場になるというわけだ。

 最後に、人と口コミの関係をマップ化した図を紹介する(図表7)。

図表7 人は口コミと日常的に接している
図表7 人は口コミと日常的に接している

 人は商品を購入する際に無意識のうちに口コミを参考にし、購入後は、購入サイトへレビューという名の口コミを行ったり、使用シーンをSNSへ投稿したりする。時には他の消費者からの質問に答えることも。その行動のすべてが他の消費者の参考になっていく。購入者が口コミの発信者になり、その口コミが誰かの参考になっていく無限の循環は、まさに今の時代の特徴と言えよう。

参考文献

Word of Mouth Marketing Association(2007),“Word ofMouth 101” Word of Mouth Marketing Association

藤崎実(2016)「Amplified WOMを実現させる方法論に関する考察−ブランド・アドボケイツの組織化による可能性−」『2016年日本広告学会全国大会 要旨集』

藤崎実(2016)「アンバサダー顧客はなぜ無償で推奨行為を行うのか」『立教ビジネスデザイン研究』13号

藤崎実(2017)「アンバサダー顧客の推奨を促す要因に関する研究−アンバサダー・プログラムにおける調査より−」『2017年日本広告学会全国大会 要旨集』

藤崎実(2017)「企業広報による消費者発信情報の広報活用−ネット時代の可視化と共有化を背景に−」『日本広報学会 第23回研究発表全国大会 要旨集』

藤崎実(2017)「WOMマーケティングのメカニズムに関する研究−Amplified WOM実現の方法論−」『日本マーケティング学会 カンファレンス・プロシーディングス Vol.6』

シャーリーン・リー、ジョシュ・バーノフ(2008)『グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略』翔泳社

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この記事の著者

藤崎 実(フジサキ ミノル)

東京工科大学 メディア学部 専任講師
博報堂宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA\HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て現職。東京コピーライターズクラブ会員。CMプランナーを経てクリエイティブディレクター、マーケティングディレクター。変わりゆく時代とメディアの最前線を歩み、常に先駆的な...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/07/25 13:15 https://markezine.jp/article/detail/28857

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