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インターネット広告の歴史と未来

OvertureとAdWordsの誕生 Yahoo! JAPANを制するものが検索連動型広告を制す


「プレミアム広告」からAdWordsに主力広告商品を移行するGoogle

杓谷:Googleの収益の柱はポータルサイトへの検索エンジンのOEMと「プレミアム広告」という広告商品でした。AdWordsをはじめる前にGoogleに広告商品があったことはあまり知られていません。「プレミアム広告」について教えてください?

佐藤:「プレミアム広告」はいわゆるバナー広告と同じインプレッション固定単価のテキスト広告で、検索結果の上部に2枠だけ広告を表示することができました。AdWordsの検索結果上部の広告枠をプレミアムポジションと呼んだのはその名残です。

 その一方で、米国では検索結果の右側で、後にAdWordsとなる検索連動型広告のテストを進めていました。クレジットカード決済のみの対応で、入札価格と品質スコア(当時はクリック率のみ)を掛け合わせた「広告ランク」で掲載順位が決まるというほぼ今と同じモデルでした。それがうまくいったので、日本でもサービスを開始しようということになりました。

初期のAdWords公式サイト(Internet Archive)
初期のAdWords公式サイト(Internet Archive

佐藤:AdWordsの導入にあたって米国側も日本側の意見を聞いてくるわけです。しかし、当時のGoogleのセールスチームにはインプレッション固定単価の「プレミアム広告」を販売するメンバーしかおらず、運用型広告という概念自体がとても新しかったため、どうしてもバナー広告の売り方的な発想に引きずられてしまいました。「検索結果右側の広告枠の上3枠は固定で行きましょう」といったような、今思えば見当はずれな回答をしていましたね。

 セールスチームとしては、既存の「プレミアム広告」への影響が出るAdWordsの日本での導入をやめてくれ、という声が上がりました。オークションモデルという課金モデルの難しさから、日本では受け入れられないだろうという声もありました。

杓谷:テレビや新聞・雑誌などをはじめ、価格が固定された「広告枠」を販売・仲介することが一般的な広告の仕事でした。課金がオークションモデルでしかも入札価格を高くしてもクリック率が低くなると掲載されない可能性がある、という今の運用型広告では当たり前のモデルは、革新的すぎたのだと思います。その反応はある意味当然だったのかもしれないですね。

佐藤:米国でも、現Oath Inc.のCEOであるティム・アームストロングが数百人規模の「プレミアム広告」のセールスチームをリードしていて、AdWordsには数十人規模のサポートチームしかいませんでした。そのAdWordsが爆発的にヒットしてしまったので、Googleは現Facebook COOのシェリル・サンドバーグを雇い、統括させることにしました。

 日本でも当時「プレミアム広告」のセールスとして採用したメンバーがいたのですが、入った2週間後にサービス終了が社内アナウンスされてしまいました(笑)。「プレミアム広告」はそこから1年をかけてサービス終了となり、セールスチームは今後すべてAdWordsのセールス担当になる、ということになりました。「プレミアム広告」の在庫のマネージメントや、広告の掲載を管理する人たちの仕事がなくなって一斉にAdWords側に異動していきました。

 2003年には「プレミアム広告」の終了が社内的に宣言されて、「プレミアム広告」のセールスを統括していたティム・アームストロングも大手広告主向けのAdWordsセールスチームを統括することになりました。Googleの広告営業としては2004年頃にはAdWords一本でやっていくことになっていたと記憶しています。

2002年にOvertureとAdWordsが日本で検索連動型広告を開始

杓谷:Overtureが日本で検索連動型広告を始めたのが2002年のことですね。

杉原:はい、その通りです。日本では2001年に鈴木社長を筆頭に数名で大手町のレンタルオフィスでサービス開始の準備を進めており、私は2002年の9月にOvertureに入社しました。サービス開始の3ヵ月前のことです。その時の社員数は20名ほどでした。

 2002年12月に正式にサービスを開始することになり、大々的にプレスリリースなどを行ったのですが、Infoseek、Biglobe、Excite、gooなどのポータルサイトの検索エンジンで検索連動型広告の提供を開始するという発表で、この時点では当時圧倒的な検索シェアを誇っていたYahoo! JAPANは含まれていなかったと思います。

 Yahoo! JAPANとはそのプレスリリースのすぐ後くらいに正式にお取り引きがはじまったと記憶しています。Yahoo! JAPANでのサービス開始当初から、検索結果のトラフィックをOvertureとAdWordsで50:50に分割して両社の広告を表示することになりました。

佐藤:私は2001年10月にGoogleに入社しましたが、私の記憶だと日本では2002年の7月にAdWordsがGoogleドメイン上でスタートし、その後提携する検索エンジンが決まり、Yahoo! JAPANでの配信が決定したのが11月か12月だったと思います。

 2002年7月のAdWordsのサービス開始時は、セールスチームはこれまで通り「プレミアム広告」を売っていたので、AdWordsの営業担当はつきませんでした。AdWordsはOvertureと違ってセルフサービスで販売していくモデルだったので、サポートチームが担当していくことになりました。

杓谷:2002年4月の時点でGoogleは検索連動型広告に関する特許侵害でOvertureから訴訟を起こされています。2002年7月の日本でのサービス開始時は、米国で訴訟を抱えながらのスタートだったことになりますね。

参考:『米Overtureが米グーグルを特許侵害で提訴』(日経 xTECH)

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Yahoo! JAPANを制する者が検索連動型広告市場を制する

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この記事の著者

杓谷 匠(シャクヤ タクミ)

Jellyfish Japan株式会社 Data Strategy Director
2008年に新卒一期生としてグーグル株式会社に入社。2010年にスタートアップの立ち上げに参画したのち、しばらく川原でひざを抱える日々を経験。2013年からトリップアドバイザー株式会社にてSEMアナリスト、BIアナリストを経験したのち、20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/01/29 10:04 https://markezine.jp/article/detail/28981

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