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MarkeZine Day 2025 Retail

リゾームマーケティングの時代

広告の鬼・吉田秀雄の偉業を再び マイデータ・情報銀行の仕事をゼロから創りあげる


マイデータ・インテリジェンスの3つのコンセプト

Caring

 「Caring」とは、思いやることだ。マイデータとは、要するに、「私のデータを大事にしてください。私を大事に扱ってください」ということを指す。デジタル上の人権(Digital human rights)、「デジタル化された私」も大切にして欲しい。これは、カスタマー・ケア、デイ・ケア、ヒューマン・ケアなどのコンセプトとも通じる。

 たとえば、昨今、「DNA Testing」とか「DNA-based Personalization」という言葉を耳にした人もいるだろう。昨年の「Global Wellness Summit」における、Ali Mostashari, PhDのプレゼン動画を見て欲しい。DNAのデータを使ったヘルスケア、スキンケアなどのサービスが台頭しつつあるのがわかる。

 このビジネスは、きちんと許諾をとって、個人のDNAデータを大切に扱うことが大前提だ。大事にしてくれて、かつ、自分にピッタリのヘルスケアやスキンケアの商品・サービスを提供して欲しい。信頼度の高い企業にだけ、個人はDNAのデータを共有することになる。

Sharing

 「Sharing」とは、シェアリング・エコノミーと同じ概念だ。ただし、共有する資産は、空き部屋や自動車ではなく、ここでは、個人情報だ。私の資産(個人情報)を大事に扱って有効活用してくれる企業にだけ、個人情報を共有する(Sharing)。たとえば、「三菱UFJ信託銀が『個人データ銀行』 企業に仲介」(日本経済新聞社)という記事の中で、「データ提供の対価として、個人は1企業ごとに毎月500~1,000円程度の報酬を得られる」という記述がある。

 A社に提供した個人データをB社に共有し有効活用してもらう、などいくつかのパターンが想定される。その対価を個人が受け取るし、仲介企業(マイデータ・インテリジェンスなど)も仲介料を受け取ることになる。

Recycling

 「Recycling」とは、循環型経済の基本だ。広告業界では、これまで、プレゼントキャンペーンなどで集まった個人情報を賞品発送後に破棄してきた。大量にマス広告を投下して集まった個人情報を破棄してきたのだ。

 しかし、この個人情報を個人の許諾をとって、再利用していく余地がある。リゾームモデルは、始まりも終わりもない循環型だと以前の連載でも書いた。社会がリゾーム化して個々の生活者がネットワークにつながると、個人情報の循環経済を創れる。個人に主導権をもってもらえるシステムが構築され、各個人の意思に基づいた個人情報の循環が、価値を生み出す。

 たとえば、経済産業省が推進する「電子タグを用いたサプライチェーン情報共有システムの実験」などにみられるように、電子タグの普及が進めば、情報銀行の仕組みと併用することで、モノと個人情報の「Recycling」が新たな価値を創出する。

 マイデータや情報銀行のビジネスモデルは、おそらく、将来的には、テレビのビジネスにも影響する。テレビ端末がネットに結線されていくからだ。だから、電通や博報堂にとってクリティカルなビジネスになるはずだ。

 さて、字数が多くなってきたので、テレビや「Caring」「Sharing」「Recycling」のもっと突っ込んだ話は、また別の機会に書きたいが、とにかく私は、社会のリゾーム化を把握し、その特徴を見極めた上でビジネスを構築することが、今の広告業界にとって不可欠だと考えている。

 そして、新しい環境の中で、「ゼロから仕事を創る」という気概を持つ必要がある。「仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない」。この吉田秀雄氏の言葉、好きなのだ。

 もちろん、労務問題を無視してはいけない。だから、制限時間内で、新しい仕事を創る努力をしよう。

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/09/21 15:33 https://markezine.jp/article/detail/29092

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