仕事は自ら「創る」べきもの 吉田秀雄の思い
「仕事は自ら『創る』べきで、与えられるべきでない」
「仕事とは、先手先手と働き掛けて行くことで、受け身でやるものではない」
批判される覚悟でいうが、私は、電通「鬼十則」が好きだ。特に、この第1則と第2則が気に入っている。電通「鬼十則」は、吉田秀雄氏(電通第4代社長)が昭和26(1951)年に作った。だが、周知の通り、時代錯誤の表現などが問題視されて、電通の社員手帳から削除されてしまった。もちろん、そのことに異論はないのだが。
『電通を育てた”広告の鬼” 吉田秀雄』など資料に目を通して思う。吉田秀雄という男は、本来、自分を鼓舞するために「鬼十則」を書いたのではないか? なぜなら、戦後の混乱期に、日本の復興と広告業界の発展を信じ、当時は普及していなかったラジオ・テレビ広告の礎を築いたからだ。
そもそも、民放ラジオ・テレビ市場が存在しなかった。ゼロから創るしかない。「仕事は自ら『創る』べきで、与えられるべきでない」。それは、まずもって、自己の魂を高めるためだったのではないか?
昭和22(1947)年、のちに第8代電通社長になった木暮剛平氏に、吉田秀雄氏は語ったらしい。
「戦時中の軍需産業中心型の経済から、自由経済に変わり、国民の生活を豊かにするための商品やサービスの生産を中心とする経済社会へと転換する。米国と同じように広告の役割は増大し、広告会社の花咲く時代が訪れる」(『電通を育てた”広告の鬼” 吉田秀雄』引用 p33)
日本と広告業界の将来を案じ、ゼロから市場を創り上げた男の、気概を感じる言葉だと思った。
先日(2018年9月3日)、電通グループは新会社「株式会社マイデータ・インテリジェンス」を立ち上げた。私は、この会社設立の背景には、業界の地殻変動があるとみている。今、種を撒くことで、将来、花開く時が訪れる。吉田氏が電波事業に足を踏み入れ、5年、10年かけて仕事を創り上げたように。
私は電通の社員ではないが、委託を受けて電通の業務に少し関与している(まぁ、仕事をもらっていると言ったほうが正確かもしれない)。この「マイデータ・インテリジェンス」設立にも、この1年半ほど関わってきた。「マイデータ」という単語は、広告業界ではまだ馴染みがないと思うが、それ以外にも、PDS(Personal Data Store)、オープンデータ、情報銀行、データ取引市場など、この分野に関連する専門用語がある。できれば、「内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室の資料」や「MyData.org」などの資料を確認してほしい。