ワンストップで進められ、かつ意思決定も進められる体制
―― ツールを導入したはいいが、宝の持ち腐れになってしまうというケースもよく耳にします。手段が目的化してしまうケースをたくさん見てきましたが、御社ではどう取り組まれていますか。
森:私たち自身、まだまだフル活用できているとはいい難い状況ですが、手段と目的を履き違えないように意識していますし、活用を推進できる体制にしています。具体的には、グループマーケティング室は、「ツール導入を決める人」「ツール導入のための設定をする人」「ツールを活用したプランを企画する人」「ツールを実際に触る人」でチームを組んでいます。
「作ったものの誰も触らない」「やりたいことはあるがツール改修をしなければできない」。こういった課題に対する対策を一つのチームでワンストップに進められ、かつ「すぐに決裁できる」体制であることが非常に重要です。直近でいうと、経営層や実際にお客さまと向き合っている現場の担当者へのデモンストレーションに、BIツールは非常に有効という感触を得ています。
相良:JRキューポDMPとBIツールを連携することにより、データをビジュアル的に分析できるダッシュボードを随時作成しています。担当者は様々な角度でデータを確認し、施策を検討して、効果検証を始めています。これまでは一部の担当者だけがデータを抽出・加工するという形をとっていたので、担当者以外でもタイムリーかつ容易にデータを触れることができるようにしています。
矢野:現場の声を実際に聞きに行くことも多いですね。現場は改善策を求めているので、一緒に改善していきましょうという姿勢を持つことは、ツール浸透には重要な姿勢だと思います。
森:実際に使って、見せて、一緒に動かしていくのが大切です。「準備したから後はよろしく」では誰も使わないし、普及もしない。背中を見せてあげる。山本五十六の世界です(笑)。
JR九州ならではの経済圏構築を視野に
―― データ・ドリブンマーケティングは企業活動して正しい一方で、企業の過渡なデータ収集・活用に警鐘を鳴らす動きもでてきています。データ社会といかに向き合っていくのかに、今後企業は向き合わざるを得ないと感じますが、御社はどのようなスタンスですか。
森:当社では将来の幹部候補を集めてJR九州の未来を考える場を設けています。その中でもライフログ等を活用してビジネスを拡大させられるのではないか、などの話が出ています。
一方で私たちはJRという看板を背負っており、データ収集・活用に対するお客さまの反応も様々です。この中でいかにアクセルとブレーキのバランスをとっていくのかが、私たちならではのおもしろい部分でもあると認識しています。
矢野:JRキューポのコンセプトは、「お客さまとJR九州グループのエンゲージメントを強めること」。つまり、顧客視点を持ちJR九州グループとしてどのように顧客の課題解決を行っていくのかが目的です。このコンセプトから逸脱しないようにしておくことが最重要だと考えています。
―― 今後について。JRキューポのプロジェクトの推進はもちろん、今後どのような価値を提供していきたいと考えていますか。それぞれ教えてください。
森:JRキューポを「扇の要」とした成長戦略は3つのフェーズで考えています。現在は第1フェーズにあたりますが、事業環境の変化によっては、第2フェーズをすっ飛ばして第3フェーズと同時進行もありえるかなと想定しています。
第2フェーズはJR九州グループ企業間での話にとどめていますが、第3フェーズではJR九州グループ企業以外の企業との連携も視野に入れており、私たちだからこそできるJR九州経済圏の構築を目指しております。
相良:まずはJR九州グループがまとまって、お客さまとの関係性をより強化していきたいです。関係性を強化できれば、新たな価値・サービスの創出につながると考えております。現在も頻繁に東京に行き「ドアノック」で、スタートアップ企業との情報交換を行っているのですが、日本だけに限らず海外の最新の事例などもよく研究し、新たな価値創造につなげていきたいです。
矢野:直近でのおまとめ会員数は約20万人と申し上げましたが、この数を50万、100万と増やしていきたい。ポイント統合によりJR九州グループ各社でこれまでの資産を活用し、シナジー効果を生み出せる土壌が整いました。少しでも多くの成功事例を作り、データ・ドリブンな文化を社内に浸透させていきたいですし、効果の最大化を図っていきたいです。