デジタル・パブリッシャーとして見据える今後のビジョン
――オフラインのイベントも開催されているようですが、ここではどのような取り組みがありますか?
フロケ:「ハースト ビューティフェスティバル」というイベントを開催しており、今年で3年目になります。イベントでは、ハーストの総合力を活かし、媒体の垣根を超えた多角的なコンテンツを発信しており、昨年は約5,500人の方に来場いただきました。
このイベントでも来場者情報の収集に取り組んでいまして、参加者がどのブースに立ち寄ったか、どのジャンルに興味を持ったかをデータで集めています。今年は、よりパーソナライズされた体験を提供するため、事前のアンケート情報を基に参加者の関心に合致するイベントコンテンツに誘導したり、当日収集したデータを基に後日おすすめのコンテンツや商品を紹介するなどのフォローアップも行っていきます。一過性の体験ではない点で、BtoBのクライアント様に対してもより充実した提案をすることができます。
――オフラインでの行動もデータ化されているのですね。では最後に、デジタル・パブリッシャーとして、今後どのようなビジョンを描かれているのかお聞かせください。

フロケ:実は、出版事業の収益もこれまでずっと伸びてはいたのですが、昨年初めてその成長が止まりました。先述した通り、およそ2年後にはデジタルと出版事業の売上は半々になり、5年後には逆転する見込みです。
ですが、チャンスがあれば新しい雑誌も出していきたいと考えており、そういった意味で、紙媒体の価値を軽視しているわけではありません。実際に、今年は『CRファッションブック』を10月にローンチします。別の新しいチャレンジとして、ハーストIDを中心にデータを活用し、CRMへの強みを活かしてクライアント向けのコンサルティングに近いサービスもスタートしています。
ハースト婦人画報社のデジタルシフト、そして360°戦略の目的は「収益源の多様化」です。読者やイベント参加者のデータに紐づいたハーストIDは、確かに事業の肝ですが、これだけではマネタイズできません。歴史ある出版社のコンテンツ力、そして蓄積された顧客データとグローバル企業としての連携やスピード。我々がもつリソースを活かし、デジタル・パブリッシャーとしてさらなる事業拡大を目指していきます。
